Temptation

□すべて、愛のせい
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君を泣かせるのも

君を束縛するのも

君を俺の中に閉じ込めてしまうのも
すべて愛のせいだと

そんな言葉で片付けられる?

無理だね

俺なら理解出来ないね

なのにそれをしている

君に対して

愛してる・・それだけだ

なんて言いながらね

馬鹿じゃ無いか?
病気だろ?

このままじゃ俺も君もダメになる
俺は絶対に君を殺してしまうんじゃないかって・・

だから
一緒に死んでくれないか?

お互いの血を一滴残らずに
飲んで
そうして
冷たくなって

一緒に眠ろう



「なんですか?これ?」
「いや・・・どう思う?」
「は?・・・まさか・・・名取さんが書いたんじゃ無いですよね?」
紙をヒラヒラさせて恐々と名取さんに聞くと
「もし、俺がそんな風に君に迫るとさ、どうするんだろうな〜、夏目は」
そうしてニヤリと笑う

手を口に当てて、しばし考えてから
顔を上げ、にっこり笑う
「そうですね・・・取りあえず・・式のみんなに手伝ってもらい、簀巻きにしてそこのベランダから一昼夜吊しますね。で、そのあとに・・・・」
「もういいです・・・ありがとうございます」
名取さんは俺の手から紙を取り戻し、ファイルに戻して鞄に入れる

「そんなの言う役なんですか?」
「ん・・・舞台なんだけどね・・・取りあえず理解出来なくて・・・気持ち悪いし」
「ブフ・・・」
「なんで笑うんだよ」
「だって・・・名取さんは誰かをそこまで好きになった事ありますか?自分だけの世界に閉じ込めたい!なんて思うほど」
「・・・・無いね」
「でしょ?理解出来るわけ無いですよ」
「そんなの夏目だって一緒だろ?そこまでの恋愛経験なんて無いくせに」

「・・・・・」
眉を上げて、見上げると少し名取さんが引く
「な・・・なに?」
「無いですが?」
「なんで、切れてるんだ?」

名取さんは鞄を戻す為に席を立ち、部屋へと消える

その閉まった扉を見ながら
小声で呟く


「俺がそんな風に迫ったら・・・あんたはどう逃げるんだ?」

「もう少しだけ・・待ってやる・・そんなに時間は無いけどね」


呟いて窓の外を見る
窓には自分が映り、ニヤリとこちらを見返して来る

まだ隠しておくよ
本当の自分は

俺は息を吸い込んで元気よく叫ぶ
「名取さ〜ん・・おなか空きました!ピザ食べたいです!」
「え〜!?嘘だろ?・・・さっきあれほど食ったのに・・」
部屋着へと着替えた名取さんが出てきて呆れて呟く
「若いから」
「うわ・・・腹立つな・・・選んで注文したら?」
「ありがとうございます!」

俺は笑顔でカタログを広げる

心の奥へ気持ちをしまって
今の時間を楽しもう

そう思って

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