Temptation

□魔法 ハーレクインver
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突然のプロポーズは
バラが咲き誇る中庭の中だった

跪いて見上げてくる笑顔に
戸惑いながら自分の右手をそっと差し出すと
左手でそっと受け取り、ゆっくりと口づけを落とした

「君を一生守る、どんな事からも・・私の生命をかけてでも」

ゴージャスな笑顔を浮かべ囁いてくる言葉に胸が震える

まさかこんな自分に、彼がプロポーズをしてくるなんて
驚きと喜びがまじった不思議な気分で
体がフワフワと浮いているような感じで

そんな俺の気持ちを分かっているかのように
優雅に立ち上がり、そっと額にキスを落としてくる

ニッコリと笑い

「プロポーズを受けて貰えて良かった・・少し不安だったんだよ?」

え?・・こんなに自信に溢れて何でも持っている人が?

戸惑いながら見上げると
そっと頬を撫でながら

「君は・・このシーズンの最大の注目だった・・ダンスを申し込むのも
散歩に誘うのも、どれだけのライバルをかいくぐったか分からない位」

そ・・そんな事ない・・

そう思いながら頭をフルフルと振ると

「クス・・君は気づいて無かっただけだよ?」
「そ・・・そんな事ないです」
「ん〜・・・みんな君の白い肌やバラ色の頬、この可愛いバラ色の唇に触れてみたい
その涼やかな声が聞きたいって、どのパーティの時も人だかりが出来てた」

そういって笑顔で見下ろしてきている人こそ
このシーズンの最大の寵児だったはずだ
誰もがあこがれるハンサムな容姿と、広大な領地を持ち
誰もが彼の花嫁になりたいと
彼が出席する舞踏会はどこも大盛況だった

そんな彼が自分に微笑みかけて
ダンスカードに名前を書き込んだ時は
自分も付き添いも卒倒するかと思った
実際にシャペロンは倒れた

そこからは舞踏会で会う度にダンスに誘われたし
馬車で散歩にも連れ出して貰ったり
領地で行うパーティにも家族ごと招待された

そして夢のようなダンスのあと、そっと抜け出して連れてこられた
温室で初めての口づけをされた

軽く触れ合うだけのキスから、熱く燃え上がるようなキス
誰も来ない温室で、抱きしめられながら受けるキスに
頭がぼんやりしながら見上げると
クスッと笑いながら頬をそっと撫でられて

「他の誰ともこんなキスしちゃダメだよ」
「し・・しない」
「くす・・」

そういって降りてくる形の良い唇を目で追って
そっと瞼を閉じたのは先週の事だった

今は明るい日差しの下、両手を握られて見下ろされている
そっと額にキスを落としながら
煌めく笑顔を浮かべる

「君が・・あの舞踏会場に降りて来たとき・・階段をゆっくりと
降りてくるときに・・」
「?」
止まった言葉に、顔を上げると
「君の虜になった・・・」
「・・・・」
顔が赤くなるのが分かる
そっと目を伏せると

「ねえ・・どんな魔法を使って私を惹きつけているの?」
「え?・・・」
慌てて首を振るが
「もう・・朝も昼も夜も君の事で頭が一杯だ」
「あなたこそ・・どんな魔法仕掛けなんですか?その笑顔・・
いつもいつも輝いています」
「う〜ん・・・それは秘密」

そういって奪うようにキスを落とす
ビックリして、シャペロンを見ると、慌てて顔を逸らしてくれた
明日には結婚予告が新聞に入る2人だから
見逃してくれているみたいだ

「もう・・・何するんですか・・こんなとこで」
「ごめん・・つい」

笑って手を引かれて、広大な庭を散歩しようと歩き出す
花々が咲き誇る庭園はまるで2人を祝福するかのように
揺れて喜んでいるみたいで

これからの人生の伴侶を見上げる
幸せな気分で

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