Temptation

□名取誕 2
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「そうだ!・・名取さん、もうすぐお誕生日ですね!」
「ああ・・そうだね」
新聞に目を落として、さほど感慨も受けた感じも嬉しそうな感じも受けずに
淡々と答える人を振り返って見ると
視線を感じたのか、ちらりと流し目をされてから

「嫌な記憶しか無いんだよね〜」

ぽつりと呟く
「え?・・・誕生日がですか?」
「うん・・だからあんまり嬉しくないな〜」
相変わらず新聞に目を落としたまま呟く様はあんまり見たことなくて思わず焦ってしまう
「名取さんがですか??・・なんだか信じられないです・・」
傍に寄っていって、足元へペタリと座り込んで呟くと
頭上でクスッと笑ってから頭を撫でられる
「夏目は気にしなくていいよ、覚えてくれててありがとう」
そういって笑顔を浮かべる顔を見て決意した

思わず立ち上がり
「そんな事言わないでください!俺なんでもします!名取さんが望むこと全部!
だから今年は良い誕生日にしましょう!」
「・・・・・・・男に二言は無いな?」
「へ?・・・・あ・・・はい」
「よし!出かけるぞ、早く用意して」
新聞を投げ捨て立ち上がって部屋へ消えた名取さんをポカンと見送る

「へ?・・・・・あれ?」
「夏目!早く動く!一泊はするからその準備!」
「あ・・はい」

慌てて持って来たバッグに、昨日来てから出してハンガーに吊っていた服を外しにかかる
畳んでバックに詰めながら、なんでこの展開??
頭を悩ましながらも準備にかかり、キッチンの後片付けや
戸締まりなどもしていると、名取さんはあらかじめ準備していたかのように
服も着替えてバックを玄関へと置いてから何やら電話をしている
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