だいすきなきもち

□はじめてのきもち
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自分の人生・・ってたかだか15年だけど・・
振り返ってみて
人・・人間が恋しいとか焦がれることは、両親以外無かったような・・・いや、全くない自分が
ここにきて、滋さん、塔子さんと出会えて、この土地に来てから急転直下のごとく大切な物が、宝物が増えてきた
今まで誰にも理解もしてもらえない事が、理解してもらえる
誰にも聞いてもらえなかった僕の言葉を嬉しそうに聞いてくれる人がいる
なんて、暖かくて、嬉しくて、これだけでも心がほんわかする

今までは大嫌いでしか無かった妖も、ニャンコ先生と出会えてから次々と
優しい妖にも出会えた。そう考えるとニャンコ先生は自分にとって、すごいラッキー妖なのかも・・・
でも大酒飲みだけど・・
大事に、大事にしたい宝物・・

ただ、この頃おかしい自分もいる・・
ふと思い浮かぶ、顔、声、手の感触・・途端にボッと顔が熱くなって
パタパタと下敷きで顔を仰ぎ、窓の外をみたら下に柊がポツンと木の下にいるのを見つけた
<柊・・>
終了のチャイムと共に下に降りていき、木の下に行くと柊が寄ってきた
「主様からの伝言だ、学校が終わったら手伝って欲しいことがあるそうだ」
「・・名取さんが、分かった、今日は何も無いからすぐ出られるよ」
「では放課後に迎えに来る・・」
言った途端に柊はスッと消えた

<名取さん・・・か>

また、顔が熱くなりそうなのをパタパタと仰ぎ、急いで教室まで戻った
「夏目〜、どこ行ってたんだよ〜」
帰ったら、西村が泣きついてくる
「ごめん、ちょっと・・」
照れ笑いしながら言って、席に戻ると
「!!!なんか嬉しそうだ!怪しい怪しい!いいことあったんだろ〜」
絡んでくる西村をなだめながら席に着き、放課後を楽しみに次の授業の準備をした

授業中も頭に浮かんでくるのは優しい笑顔と、穏やかに話しかけて、さりげなく近況や自分の事を気にかけてくれる
笑顔を思い出すと、胸が痛い
今までの生活の中で、ここまで心が満たされて、安定した生活なんて無かった
こないだは塔子さんに、「貴志くんは、男前だからたくさんもてるでしょ?」とウフフと
笑われたけど、返せる言葉が見つからなくて
今まで恋愛なんて、自分には一切関係の無い話だと思っていたし
これからの将来に自分のそばにいる誰かなんて・・
今はこの生活が長く長く続けられるように
願いはたくさんありすぎて、欲張りになってきている自分にも驚き
こんな感情があったんだなと今更発見している日々
ポケッとしていると、先生が「夏目〜、いい加減集中しろ〜」と声が飛んできた

放課後に西村達に、先に帰ると声をかけてから急いで校門を出て、いつもの場所に行くと
ニャンコ先生が柊に絡んでいる
「主様の用事だといっておるだろうが!五月蠅いぶたねこだの」
「なんだと〜!高貴な俺様にむかって豚猫とは!!」
わめく先生を後ろから抱えて
「ごめん、またせたか?」
「いいや、待っておらん、さっきこいつが通りかかり難癖を付けてきたところだ」
「だめだろ〜先生」
あばれる先生をなでなでしながらなだめると
「なんでおるのか聞いてだけだ!」
「しつこい・・」
表情の見えない仮面の下からボソリという柊がおかしくて、くすくす笑うと
さらに暴れて腕の中からするりと抜けて地面にすたりと立ち
意味ありげに見上げてきた
「まあ、わしは夏目と違いあの小僧に用は無いから」
と、立ち去り際に、ニヤリと笑いながら

「いい機会だからこのところ、夏目の胸の中でもやもやしている物をあの小僧にぶつけてみろ」

「!!!!!????・・・は???」
俺が顔を真っ赤にぱくぱくしていると
「なんだ、主様になんかあるのか?」
「!!!・・いやなんでも無い!!」
「なんだ、顔が赤いぞ?心拍数も上がっているみたいだ、体調悪いのか?」
柊が俺の額に手を出してくるのを避けながら、文句を言おうとにゃんこ先生を見たら
丸い尻尾を振りながらもう遠くまで行っている
<油断も隙も無いな・・つ〜かだだもれなのか、俺って>
心配する、柊になんでも無いといいながら二人で歩き出した
名取さんの元につくと
先日購入したと言っていたピカピカの新車にもたれながら携帯で話していた
俺に気づくと手を挙げて、ごめんと形だけ謝ってきた
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