だいすきなきもち ミニ♪

□へ〜〜〜んっっしん!!!
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「お邪魔します〜」
言葉とともに、リビングの扉を開けると
キッチンから名取さんの声が聞こえてくる

「いらっしゃい、出迎えられなくてごめん、今手が離せなくて・・」
謝ってくる声は聞こえるのに姿は見えず

「何、作ってるんですか?」

キッチンをカウンター越しに覗くと・・・

「だ!・・・誰!!??」

「え?誰って・・・おれ・・」

名取さんは髪を金髪にして、パーマをあてている
額にクルクルと落ちていて、後ろは襟足など見えないくらいに短くしている
キョトンと見てくる瞳はカラコンを入れているのかグレーだ。眉毛は細くピッシリと上に上がっている
しかも、耳には右に4つ左に5つもリングが刺さり

「・・・・・・・・・」
「あ〜、ごめん午前中にポスター撮りがあって今度の役のイメージにあっという間に変えられてさ・・どう?」
名取さんは自分の変身を忘れていたのか
俺の表情をみて気づいたみたいだ

「や・・・どうって?」
「似合う?金髪」
「や・・・なんか・・・」
俺は顔を赤くして、俯いてしまう
なんだろ・・・なんだこの感覚・・・
「夏目?」
呼ばれてチラリと見ると、眉を寄せて見てくるが・・・・・・誰だよ、あんた・・・・って感じで

俺はカウンターから離れて
なんだかソファの近くまで行き
そこに座り込む

なんだかこのモヤモヤした気持ちは・・・
一体・・・

名取さんはキッチンから出てきて
俺のそばへ来て、頭に手を置く

「大丈夫?気分でも悪い?」
手から頭をずらして
そっぽを向いたまま、ボソリと言う
「いえ、悪くないです」
「・・・手を避けた?いま・・・」
「え?・・・いや・・・」
相変わらずそっぽを向いたままだ

名取さんは俺の前に座って
「夏目?」
と顔を両手で挟んで覗き込む
俺はその両手をガッチリ掴んで、俺の顔から引きはがそうとする
「なんで・・・手を剥がそうとするんだよっ!」
名取さんは剥がされまいと力を加えて
俺は必死で剥がそうと力を入れる

「さわんないで・・ください!!」

力一杯叫ぶと、名取さんはえ?と驚愕の表情を浮かべて手から力が抜ける
「なんで・・・?」
「いや・・・なんか・・・・名取さんに悪いですから・・・」
「は?」
「だって・・」
「だって?」
「なんか知らない人だもん・・・」

「えええ〜〜〜!!!!俺だよ!」

「いや・・・分かってるんですけど・・・いや・・・無理・・・触らないでください」
俺が首を横に振ると
「え!!??なんで・・・・カラコン?」
「さあ・・・」
「金髪?」
「どうだろ・・・」
「ピアス?」
「まさか」
「もしかして・・・さ・・・・」
名取さんが半分泣きそうに言う

「もしかして?」
「この姿のままだと、触れないって事?」
「うん・・なんか名取さんに悪いです」
「いや!!意味分からないから!!!」
「だって・・違う!名取さんじゃない」

俺が首を振ると
名取さんはそのまま床に崩れ落ちて
ありとあらゆる罵声を吐き散らして

「撮影は・・・・3ヶ月・・・・」
「じゃあ、3ヶ月・・・無理です」
「そんな〜・・・その間・・夏目を愛せないなんて・・・どうやって仕事がんばるのさ〜〜」

「う〜ん・・3ヶ月後を楽しみに頑張るってのは?」

「嘘だろ〜!?それ・・なんていうプレイな訳〜!!??」

項垂れている名取を見て、夏目は我慢できずに吹き出した
ケラケラ笑う夏目をキョトンと見ている名取の頭をなでなでする

「嘘ですよ。名取さんは名取さんです」
「夏目〜」
と抱きついてきて

たまには、からかう側もいいなと思う夏目でした

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