だいすきなきもち ミニ♪

□奇跡のoneday
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「名取さん、ご飯出来ましたよ」

ニコニコといつにない笑顔で声を掛けてきてくれる
可愛い恋人を見上げて、しばらく言葉が出ない

「あのさ・・・・」

ようやく言葉をひねり出す
「なんですか?・・・まだ早いですか?・・・でも12時ですよ」
時計を見上げながら呟く夏目をみて
(なんだろ・・・今日は妙に優しい・・・)
朝から笑顔で話しかけてくるし
あまつさえ、いつもは絶対にしてこない
おはチューまでしてきた
なんだか怖い・・・・
そんな思いが頭に浮かぶが、言葉に出したらまたこの可愛い態度が影を潜めてしまう
そう思って、言葉に出すのを控えた

「いや・・食べるよ・・・ありがとう」
「そうですか、良かったです」

夏目が作ってくれた、昼ご飯を食べて
後片付けまで1人でしてしまう
その後も、珈琲なども出してくれる
なんだか至れり尽くせりで、怖い気もするが
そこは飲み込んで、いい気分で家をでた

仕事も順調に終わり、帰宅途中で大型の電器店が目に付いた
(そういえば・・・新しいテレビ欲しいな・・)
そう思い、ハンドルを切って電器店に入る
並んでいる最新のテレビを眺めて、店員の説明を聞きつい、じゃあこれくださいとなってしまった
支払いと、配達の為の用紙を記入してそのまま店内をブラブラ歩いて
ゲームコーナーが目に入る
もう夜の10時になろうかという時間なのに、塾帰りの子供達が
ワイワイと盛り上がっているのを見ると

人気あるゲームの最新作発売のポップが目に入る
(あれ?・・・このゲーム・・・夏目もしてたよな・・)
あの淡泊な子が珍しく躍起になってクリアしてたのを
苦笑しながら眺めていたのを思い出す
今日のお礼にと思い、買い求めて
家に着き、玄関の扉を開けると

「おかえりなさい」

リビングの扉が開いて、笑顔で迎えてくれる
それを見て、ヘラリと笑顔になりながら
「ただいま」
「遅かったですね・・・ご飯は?」
「食べてきたよ、はいこれお土産」
「え?」
電器店の袋ごと渡すと、キョトンとして見下ろしてから
「開けていいですか?」
「どうぞ・・」
「ありがとうございます・・・わ!これ、今日出たばっかですよ」
「みたいだね」
袋を覗き込んで、嬉しそうな声を聞き
それだけで、満足してしまう

鞄を置いて、時計を外していると
後ろから抱きついて来て
「ありがとうございます」
「良かった、また鬼のような形相でクリアするのを眺めるよ」
「え?!そんな顔してません!」
「いや、思いっきりしてるから」
笑いながら前を向き、抱きしめてキスを落とすと
嬉しそうに見上げて来る
「そうだ・・明日、テレビも届くから受け取っておいて」
「テレビ?・・・買い換えたんですか?」
「うん、つい」
「へ〜・・・そうですか」

(ん?・・いつもなら無駄遣いだの、まだ使えるのに捨てるのかとか言うのに・・)
何の反論も抗議も無かった事に頭を捻りながら
「お風呂入ってくるね」
「はい」
ニッコリと笑顔で頷く
可愛いと思いつつ、頬にキスを落として風呂に入る

風呂から上がっても、まだ可愛い夏目は続いていて
ビールまで出してくれる
(お土産効果?・・・・じゃないな・・・いつも何か土産は渡してるしな・・)
疑問は変わらず浮かぶけれども、まあ良いって事でと流して
可愛い夏目を抱きしめて、順調に?愛し合い
満足した気分で、抱きしめて眠りについた

翌朝は早い時間の仕事だったので
寝ている夏目を起こさないようにベッドから抜け出し
額にキスを落として、家を出る

新人の女優があり得ない程のNGを連発してくれて
思ったよりも帰る時間が遅くなってしまった

扉を開けると、リビングには灯りが点いていて
中へ入ると、夏目がテレビ画面を見ながら
「おかえりなさい・・・遅かったですね」
「うん・・もうへとへと・・・・」
ため息を吐きながら鞄を置いて、時計を外す
昨日渡したゲームをしているためか・・・昨日までの可愛さがすっかり消えている
「あれ?・・・お帰りのキスは?」
「は?・・・しませんけど」
こちらを見もしないで、淡々と答える声を聞く

あれ?・・・・
確かに・・いつも通りの夏目だ・・
このそっけなさ
寄って来ない態度
ツンデレ振り
うん・・・昨日の夏目がらしくないのはらしくないんだけど・・・
あまりの急変振りに・・なんだか疲れもあり哀しくなる

「冷たいな〜・・・なんでそんなに冷たいんだろ〜」
そう言いながら、後ろから抱きしめて
頭に頬をグリグリと押しつけると
「わ!・・あ、危ない・・・ダメだって、今大事なとこなんですから!」
そういって・・ポイッと剥がされる
「うっ・・・ひどい!仕事頑張ってきたのに!少しくらいねぎらってくれても!」
「はい・・・おつかれっした」

そういってまた、コントローラーを握りしめて画面に向かってしまう
「え〜!昨日の夏目は何処にいったの!?あんなに可愛かったのにひどい!悪魔!鬼!人でなし!」
後ろで散々ぶつぶつ言っていると、ため息を吐きながら
ようやく画面から目を離して、こちらを向いてくれた
しかも、ポーズにしただけで止めてはいない

「あのですね・・・いい大人が、後ろでぐちぐち言わないでください」
「だって・・・」
「昨日はですね・・占いで、恋人に優しくすると良いことがありますよって出たんです」
「は?」
「占いですよ、朝の番組でやってるんです」
「へ?」
「で、優しくしてみたら・・良いことありました!当たるんですね〜」
「ゲーム・・・・」
「ああ、ゲームは自分で買いに行くつもりだったんですけど・・それよりもテレビですよ」
「テレビ・・?」
相変わらずアホみたいにポカンとしながら、鸚鵡返しに答える俺を見て
「実は〜・・あのテレビね、HDD内蔵だったでしょ?あれ壊したんですよ〜」
「は?」
「いつばれるか、ヒヤヒヤしてたんですけど〜・・ばれる前に買い換えてくれたから
すっごい嬉しかったんです・・・良かったです」
と、ニッコリと笑って、また画面に向き直り
ゲームを始める夏目の後ろ姿をぼんやり見やり

肩を落として、風呂に入りに行く
やっぱり・・こんなオチがくるんじゃないかと・・・
あんなに可愛い夏目に急になってくれるわけ無い・・・

毎日、占いに優しくしてくださいって出して貰おうかな・・・

風呂に浸かりながら馬鹿な考えを巡らす、可哀想な俺
奇跡の1日を思い返しながら

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