れんさいもの

□おとぎ話
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突然の事だった
寄宿学校の卒業目前に、学校長から呼び出されて、卒業後は後見人の元で生活するようになると告げられた

今まで顔も見たことがない後見人
贈り物や日々の便りのやり取りはあるものの
1度も面会には訪れた事も無い
ましてや学校が休みの時に訪れた事も無い後見人の家に?
そんな疑問が彼の頭に浮かぶ

戸惑いを隠せないまま、かすかに頷くと
穏やかで紳士という言葉がピッタリの校長は
椅子に掛けるよう促してくれた
薄茶の髪に、大きな瞳、灼けることを知らない肌は
夏の行事の後なのに白いままだ
表情に乏しいが、たまにはにかむように笑うのが可愛いと
友人達からはこねくり回されている
そんな青年を、微笑んで見つめて話し出した

「戸惑うのも無理は無いが・・彼は君がここで何不自由なく生活できるよう、今まで配慮してくれていた。それにこの学校に多大な寄付もしてくれて後援者でもある。何の心配もせずにいきなさい・・幸せな人生が約束されているはずだ」

校長がそういうのであれば、そうなのだろう
また頷いてみせると、微かに笑って綺麗に揃えた口ひげを触る

「私から後援者の事を話すのは禁じられているのでね・・残念ながら君の目で見て確かめてきなさい」

「分かりました・・今までありがとうございました」
「君がここへやってきたのは・・確か冬だったね?」
「はい・・そうです」
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