Beloved feeling

□番外編
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「あ・・・さんま定食・・・・」

俺は隣に立つ、名取の肩を小突いて指をさすと

「ああ、ほんとだな」

名取もニコリと微笑んで頷いた

「秋だよなぁ」
「似合わない」
「何が?」
「季節を感慨深げに言っても、夏目には似合わないよ」

名取は自分のトレイを取って
爽やかに笑うと会計へと歩き出した

俺は腹立ち紛れに、名取が嫌いな納豆の小鉢を手に取って
会計前のトレイに滑り込ました
トレイ上の食品を読み込んだ機械は「980円」と表示されており
名取はこれは違うと言っているが機械相手に無理な話だ

俺はニヤニヤ笑って自分のトレイを機械へ通して学生カードで支払いを済ませる

「これ、責任持って夏目が食えよ」
「名取が食えばいいじゃん」
「・・・・・・」

名取はムッとしながらも、2人で仲間が座っているテーブルへと行くと
田沼と北本はなんだか呆れたような表情で俺達を見て
西村は多岐に、話しかけている

「なんだよ」
「いや別に〜・・」

田沼に聞けば、田沼は肩をすくめて笑う

なんだか変な事していたかなと思うけど
思い返してもそんな事は無い
俺も気にせずに席に付いて、名取のトレイから納豆を取り上げて
調味料を全部掛けて箸でグルグル回し始めると
名取はよくそんな物が食えるなと目で訴えてくる

「美味くて身体にいいんだぞ」
「身体に良い物なら他にもある、無理にそれを食わなくてもいい」
「あ・・・そう」

わざと名取の目の箸で納豆をグルグル回して持ち上げたりしてると
名取が俺の口に人参を突っ込んできた

「うげえっ!まずい!!」

吐き出すのは流石に悪いし、見た目にも宜しくないので
軽く噛んで飲み込んで味噌汁で後味の悪さを誤魔化した

「まずい」
「匂いも嫌なの知ってるだろ」
「へーい、悪かったよ」

「っていうか、お前達の小競り合いは毎日しないと気が済まないのか?」

北本が頬杖を付きながら笑って言ってくる

「毎日〜?してないよ、なぁ?」
「うん、してない」

北本と田沼は「あ・・・そう」と声を揃えて頷いた

試験が近いし、名取は首席の意地があるためか
食事中でも本を広げたりしながら食べることが多い
俺はそれにすっかり慣れてしまっているが
西村は「食事が不味くなるだろ〜、やめろよ〜」等と嘆いている

小難しい論文を読んでいるときは完全に箸が止まることもしばしばで
そんな時は俺が

「ほら、名取・・あーん」
「うん・・・」

と箸で口へ運んだりして、せっせと食べさせている
じゃないと食事も忘れてしまうからだけど

ただそれだけ

今も、気づけば箸が止まり
本を読むことに必死になっていて
覗き込んでも、何処がそんなに夢中になるのか分からない

俺はよくテレビを見ている時に
名取から小突かれる事はある
特に警察物は弱い
犯人確保の瞬間などは箸を咥えたまま止まってしまうから

納豆を食った箸だと嫌だろうから、名取の箸を取り上げて
せっせと運んで食べさせてから
自分のを掻っ込み、食事を終わらせて
名取の分のトレイも片付けてやる

こうならない時の名取は、いつも俺の世話を焼いてくれるから
こんな時位は俺が世話をしてやらないとって思う

2人分の缶コーヒーを買って席へ戻れば
北本も田沼も教科書を広げているので
声を掛けてから名取を引っ張り上げて
最近お気に入りの中庭のベンチへ移動していく

静かで良い風も吹いて
とても居心地いい場所で、俺も名取も気に入っている

ベンチへ座ってから名取へコーヒーを渡すと
上の空で、サンキューと返ってくる

俺も論文の為の本を広げて
読み始めるけど、爽やかな秋風と穏やかな日差し
そしてお腹いっぱい

当然瞼が重くなってきて
横になって、名取の太ももへ頭を乗せると
名取の手が降りてきて
そっと撫でてくれる

それが心地よくて

つい眠ってしまい
いつも勉強が出来ない

スヨスヨよ寝てしまった俺は知らないけれど
本で日差しを遮り、寝た俺を微笑んで見下ろす名取の表情
そしてコーヒーを飲んで、何時に起こそうかなと時計を見て
また本へ視線を戻して、頭を撫でる

そんな俺達の日常


「あいつらさ、あれで付き合ってるのが周囲にばれてないなんて思う方がどうかと思うけど」
「確かに、そして名取の方が執着体質かと思えば、意外と夏目の方が
これは俺のだからのアピールがきついのも笑える」


田沼と北本はベンチで寄り添う2人を見て
笑い声を上げて
末長くいちゃいちゃしてくれと願うのだった
 

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