れんさいもの

□おとぎ話
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記憶が微かに蘇る
冬の寒い日に、ボロボロの建物の中で震えていた記憶
お腹は空いていたし、寒さで動けないし
何故自分がここで、1人でいるのか分からなかった
それまでは粗末ながらもご飯は食べられていたし
少しだけの暖も取れていたのに、引っ張られて連れて来られた場所で
突然置いて行かれたのだ
そのまま、どうすればいいか分からずにうずくまっている

目の前に白い物がヒラリと落ちて来て
なんだろうと見上げると、もう朽ち果てている建物の天井から
どんよりとした空が見える、白い物はそこから落ちて来ているのが分かり
雪だと理解出来た
このままここへ座っていたら
この白い物に埋もれてしまうのだろうか・・

裸足の足はとうに感覚は無いし
手には何度息をかけても温まってくる気配は無い
おまけにこんなに寒いのに
眠たくなってきてしまった
ここで眠れば、起きれば別の場所にいる
そんなことは漠然と分かっている

だから寝ないように、頑張って目を開けていると
目の前の建物から、2人組の若者が出てきたのが見えた
自分の目から見たら、金色と黒色に見える
人なんだろうが・・色でしか分からない
よく見ると、金色の背後に3人また人がいる

いや・・人ではない
ほんの少しだけの人生の中で、人では無い何かもいるのは知っていた・・それらは黙っているか、悪さをするのもあり
思わず指さしていた
金色に忠告するために

「人じゃないのが・・いるよ」

微かに発した声だったけれども
金色には聞こえたようで

「おや・・・君には見えるのか・・」

そう呟いて自分に近寄ってきた
大概の大人は、自分がそういいうと気味悪そうにするのに
この金色だけは、笑ったようにそう呟いた
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