Beloved feeling

□*five*
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鞄に道具を詰めて、帰り支度をしていると
「夏目〜、宮澤助教授が部屋に来てくれってさ」
「ありがとう」
(学会から戻ってきたんだな)
と西村達に別れを告げて教授室へと向かう
ノックをして扉を開けると
窓のそばに誰か立っている
逆光で良く見えず、シルエットから宮澤さんでは無い事が分かる
(誰だろ・・・お客さんかな・・・)
目を細めて見ていると

こちらを振り返り、ゆっくりと近づいて来た
光に慣らされた目がようやく人物像を浮かび上がらせる
長身のスリムな体型の男だ
顔は見えないが、長髪なのは間違いない
ダークグレーの細身のスーツを着ていて、ポケットに手を入れたまま
ゆっくりと長い足を踏み出してくる

何故か足下から体が震えが上がって
足が縫い付けられたように動かず
開けた扉のノブを握りしめたまま
その男をジッと見ていると

「察する所・・・君が夏目貴志君かな?」

足を止めて、言葉を発する人物は
切れ長の鋭い瞳と、薄く笑う唇
何やら複雑な文字が書かれた眼帯を右目にあてた男だ
俺は言葉を返すことも出来ずに固まって動けない
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