HP and SB 1 ○アズカバン編

□1 夏休みは疾風のごとく
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「ハリー!ハリー!」
ダンダンとドアを乱暴に叩く音がし、ハリーは気乗りしないながらもいそいそと玄関をあけた。
入ってきたのはぶくぶくふとったダドリーの叔母マージと、そっくりにぶくぶくふとったダドリー、ダーズリー.そして唯一血縁のある叔母、ペチュニアだ。
皆一様に"ありえないこと"を嫌う性格であり、ありえないこと、魔法使いであるハリーを毛嫌いしている。ただしマージは本当にハリーが狂っていて、精神科つきの全寮制学校に通っていると勘違いしているが。

ハリーは魔法界でその名を知らない者はいない、"生き残った男の子"である。
闇の魔法使いヴォルデモートから零歳児にして生還し、同時にやつを倒した特別な存在。ホグワーツ魔法魔術学校に入学した一昨年はさらに教師に寄生し賢者の石を用いることで復活を目論んでいたヴォルデモートを倒し、去年はホグワーツの秘密の部屋を開け、大蛇を倒しヴォルデモートが残した彼の"記憶"を消し去った。しかしそんな彼も、もともといたマグルの世界に帰ればただのいじめられっこと化すのだ。そんなわけで彼は毎度のことながら夏休みが終わることを切望していた。

一時間後、ハリーはやってしまった、という焦りと苛立ちにおそわれていた。
両親を侮辱するマージに耐えきれず、無意識に彼女を風船にしてしまったのだ。休暇中は魔法をつかってはならないのは法律で定められており、破れば当然罰を受けることになる。ハリーが恐れるのは、なによりも退学になることだった。



さらりとした長い黒髪をなびかせながらひとりの少女がホグワーツを歩いていた。
その髪や目、顔のつくりは東洋のものだが、肌は陶器のような東洋人のなめらかさに加えて白人の白さがある。すくなくともホグワーツでは見かけない顔だ。
「アルバス」
「おお、レイか」
ホグワーツ魔法魔術学校校長アルバス・ダンブルドアは闇の帝王が唯一恐れる存在である。
「どうしたの?」
「新学期の学用品のことじゃ。もちろん自分で買いにいきたいじゃろ?」
うん、と頷いた少女をみてダンブルドアは穏やかに微笑む。
「いままで魔法省のついでのようにしてダイアゴン横丁にいったことはあったが、折角の自由を楽しむ夏期休暇じゃ。お主が望むなら、一人で行ってもいいじゃろうと思うのだが」
少女の顔に驚きが浮かぶ。
「いいの?」
「いいとも」
少女はこのかた一人で出歩いたことがない。ある事情でずっとホグワーツの隠れた部屋にいたのだ。
「金はわしのをつかってくれ。ささやかながらおじからの入学祝いじゃ。猫をかってもよいぞ」
「猫!」
「しかし気を付けるのじゃぞ。何かあればトムをたよるのじゃ」
少女はうん、と頷きダンブルドアから巾着を受けとると、意気揚々と部屋をでていった。
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