HP and SB 1 ○アズカバン編

□5 一緒にいたい
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それから1週間ほどは何もなく穏やかに過ぎ去っていった。レイはしばしば朝食後や朝起きてからマダムポンフリーの元に行き、薬を服用してはいたが問題はなかった。
ただ、1週間がすぎた当たりから少し困った状態にあった。
「ハーマイオニー、やっぱりわたし、嫌われているわよね?」
「‥‥‥そんなことはないわ。勘違いよ」
レイは一見鈍感なようで、鋭いところもあった。
今はその鋭い点で悩んでいる。
どうやら自分は寮生に嫌われている様だった。
これから四年間を一緒に過ごしていく家族なのだから当然レイとしてもみんなと仲良くしたい。けれど明らかに避けられているし、ハーマイオニーたちといてもこそこそと噂をされているのがわかる。
「グリフィンドールの情報を、ドラコに渡してるって思われてるんでしょう?」
「‥‥なんでそれを?」
ハーマイオニーは驚いた。目の前のレイはかなりしょんぼりしている。
「ラベンダーたちが話しているのが聞こえたわ」
レイが嫌われ出したのは、どうやらドラコと仲がいいのが原因らしかった。
例の日本人信仰のせいでか、ドラコはレイが校庭で本を読んでいると毎度やってきてくれる。図書館で勉強していても、気づけば同じテーブルにいる。
ドラコは今までやはり散々グリフィンドールに喧嘩を売ってきていたらしく、そんなドラコが新入りのグリフィンドール生に関わるのは、グリフィンドールを虚仮にする情報を得るためだ、という噂が流れたのだ。
レイはドラコに気があり、彼になら何でも話す、という噂は瞬く間にグリフィンドールに広まった。魔法生物飼育学でドラコを庇ったのもその証拠だととらえられた。
さらにレイが魔法薬学でスネイプに限定されないのは、レイを溺愛しているマクゴナガルが裏で教員を脅しているという噂もあった。そんなこんなで今、寮生でレイと話をするのはハリーたち三人とジニー、双子と双子の友人のリーだけだった。
今まで何度も噂のせいで嫌がらせを受けたハリーは、時間が解決してくれるといってくれた。しかし寮には居づらくて、外で時間を潰すとドラコがきてくれて、安心するけれど噂は悪化し‥‥という悪循環が出来上がっていた。
正面切って言ってくれればいくらでも弁解ができるのだが、だれもレイ本人には言ってこないのでなんともできない。新学期はじまって形見が狭いものの、レイはどうもできずに悩んでいた。

「どうしたんだい、姫」
7・8限がない日、湖に足をつけながら考え事に耽っていると、突如聞きなれた声が聞こえた。
「あら、フレッド、ジョージ。授業お疲れさま」
一瞬で悩み顔を消し去り穏やかに微笑むと、双子は苦笑した。
「姫、最近元気ないね」
「あのしょうもない噂のせいなんだろう?」
そういってジョージは頭をぽんぽん叩いてくれる。
「まあ、誤解を招いちゃったわたしがわるいんだけどね」
苦笑するしかない。
「「姫は悪くないさ」」
あたりはだいぶ暗くなってきていた。
「体を冷やしたら風邪をひいてしまうぞ」
「つまり、湖から上がらないと、またお姫様だっこで連れ帰るぞ」
「おいフレッド」
ふたりの軽快な掛け合いにすこし笑ってしまいながら、レイは湖から足を上げた。呪文で足を乾かすと靴下と靴を履く。
「本当に悩みすぎるな、レイ。みんなと居づらいなら俺達といればいい」
「せっかくの可愛い笑顔も、作り笑顔じゃもったいないぞ」
優しく語りかけてくれるジョージと、頼もしいフレッドに、頷くことしかできなかった。
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