HP and SB 1 ○アズカバン編

□7 ハロウィーンの夜
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「グリフィンドールのダンブルドアです。宿題の提出に参りました」
レイはスネイプの部屋を訪ねていた。スネイプがレイに出した特別課題(授業よりも遥か先のレベル)を提出するためだ。
「入りたまえ」
スネイプの低い声を聞くとレイは地下室に入った。
「生きる屍の水です。課題の」
「見よう」
小瓶を彼に渡すとレイはきょろきょろした。
「‥‥トリカブト?何を煎じてらしたんですか?」
「貴様はそれが口癖か」
スネイプはため息をつきながら銀の皿に乗せた枯れ葉に受け取った魔法薬を垂らす。魔法薬のかけられた部位は金色に輝き、そして溶けた。
「良かろう。言うことはない」
文句なしの太鼓判を押されてレイはほぅ、と息をついた。
「‥‥座りたまえ」
スネイプは杖を振って向かいに席を作った。そして同じように紅茶を生み出す。
「砂糖は」
レイがふるふると首を振ると、フンと鼻で笑った。
「先日ルーピンのところで砂糖の塊を飲んでいたようだったのでね」
「ルーピン先生とセブルスの紅茶って対称的だもの。茶葉の種類もだけど、いれ方も。ルーピン先生はフレーバーティが多くて、濃く煎れてある。ミルクティに合う味。セブルスのは香り高い茶葉を熱湯でさっと抽出。それに砂糖やミルクを加えたら、折角の紅茶の香りや味がわからなくなってしまうわ」
スネイプは顔に出さずに関心した。
「ねえ、セブルスの最高の瞬間の記憶ってなぁに?」
「‥‥まったく、脈絡もないな」
スネイプの紅茶を味わいながら、レイは聞いた。
「パトローナスを唱えるときに、何を思い浮かべるかっていう話。わたしはただ今の瞬間を思い浮かべるのだけど、みんなは最高の瞬間って」
スネイプは目を伏せた。
「なにも瞬間である必用はない」
彼も紅茶を飲む。
「我輩はひとりの‥‥人物だな。ひとりの人物を思い浮かべるだけだ」
「人物‥‥」
レイは詮索をやめることにした。
「吸魂鬼‥‥。わたしあまり怖くないの。最低の記憶がないのかしら」
「ほう、それは興味深い」
「眠るほうが怖いわ。暗闇に閉じ込められる気がするから。でも記憶の中のわたしは閉じ込められた暗闇に終わりがあるって知っているからかしら。吸魂鬼とすれ違っても、北風に吹かれたような気はしても気分が下がることはないの」
レイは遠くを見てつらつらと呟いた。スネイプは目を細めた。
「ならばそれが未来永劫続くことを願うばかりですな」
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