HP and SB 1 ○アズカバン編

□12 木の葉舞う街で
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「なんだろ、これ」
夕食を食べて部屋に戻ると、ベットの上には大きな包みがあった。
開けてみると、出てきたのはよくあるデザインの、トレンチコート。とありきたりで、でも上質そうな黒タイツ。
「うーん?」
不思議な感じがして二つをどけると、見慣れた文字でかかれたメッセージカードが出てきた。
「決して破けることがなく、動きをサポートするように戦闘服用の魔法をかけてある。まだ実験中の魔法だが効果はあるはずだ‥‥?」
名前は書いていない。でもその文字は明らかに‥‥
「セブルス‥‥?」
そしてレイは自身の履いている靴を見下ろした。クリスマスの誘拐事件でいくら魔法を受けても唯一傷さえつかなかったハイヒールローファー。これもスネイプの考えた戦闘服用の魔法がかけられていたということだろうか?
メッセージには追伸があった。
"3つとも、本体はミセスマルフォイのセンスに任せた"
なるほど、デザインはナルシッサの力添えらしい。わざわざナルシッサに相談にいってくれたらしいスネイプに笑みが溢れた。
そして同時に沸き上がる疑問。
「今日は戦闘になるってことかしら?」
と、ドアがあいてハーマイオニーが現れる。
「はぁ。やっぱり心配だわ」
そういって近寄ってきたハーマイオニーはメッセージカードに気づき顔をしかめる。
「ダンブルドアからかしら?校長はこの間もすぐマルフォイを呼んだし、あなたのことに関しては彼らを信用してそうだし」
レイはスネイプからとわかっていても何も言わなかった。ハーマイオニーは気にせず続ける。
「これってやっぱり戦闘になるかもってこと?」
「そうみたいね」
ハーマイオニーはさらに顔をしかめる。
「やっぱり着いていってはだめかしら?」
「‥‥なにをいってるのよ」
心配性なハーマイオニーにレイは穏やかに笑って見せる。
「大丈夫よ、朝にはきっとしれっと帰ってきているわ」
ハーマイオニーは小さく頷く。
「じゃあ、着替えて準備しないと。みんなには上手く言っておいてね?」
「それは任せて」
ハーマイオニーは考え事をするような顔で答えた。


「来たね」
「はい、よろしくお願いします」
指定された土曜日夜10時。パーシーに外出が見つかればキレられるであろうその時間に、レイはこそこそと部屋を抜け出しルーピンの部屋まで来ていた。
今日は初めての実地訓練。とはいえ何をするのかはまったく聞いていない。
「先生、今日は?」
ルーピンはコートを羽織りながら話始めた。
「今日のミッションは神社に封印された杖を回収すること。場所は日本さ」
「日本!?」
日本には並みの魔法使いでは姿表しで入れない。暖炉が少ないため煙突飛行ネットワークもほとんどなく、日本魔法省くらいにしか繋がっていない。ポートキーも弾かれる。それは他国にはない現象で、日本が神の国と呼ばれる所以のひとつでもあった。
「ひとつ、日本にはダンブルドア直々につくったポートキーをつかう」
そういってルーピンはテディベアを机に置いた。
「その子!」
「君にダンブルドア校長が贈ったものらしいね。五分ほど前に校長が姿表しして持ってきた」
「‥‥いつの間に。部屋を出たときにはあったのに‥‥」
ルーピンは苦笑する。
「ふたつ、その杖は将来君が使うものだ。そして君にしか取り出せない」
それを聞いてレイはコクンと首をかしげた。
「みっつ、神社の回りには杖を狙う輩が潜んでいる可能性がある。戦闘になるかもしれない」
自然と姿勢がただされた。やはりスネイプはそれを見越してこのコートを‥‥。冬のイギリスではトレンチコートでは寒すぎるかとも思ったが、上質なこれは薄手なのにも関わらずとても暖かかった。
「それは‥‥セブルスからの贈り物かい?」
「はい、ご存じなんですね」
苦笑しながらいうルーピンにレイは返した。
「職員室でセブルスがフクロウが持ってきた小さなコートを広げていたから何事かと思ったんだ。なるほど、彼も丸くなったねえ」
確かに想像してみるとレイも笑ってしまった。
「さて、あと2分でポートキーが発動だ。気を引き締めて。覚悟はいいね?」
「ええ」
レイはルーピンが抱き抱えたテディベアの頭を撫でた。ルーピンにはテディベアがよく似合う。
「3、2、1‥‥」
とたん、グインと世界が歪んで二人は消えた。
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