HP and SB 2 ○ゴブレット編

□5 candidacy
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翌朝。アーサーはため息を付きながら新聞を読んでいた。
「まったく……ネタを探し回ってるときいてたんだが、ついにリータ・スキータは見つけてしまったらしい」
「どうしたの、アーサー」
モリーはアーサーに紅茶を渡しながら問う。
「バーサ・ジョーキンズの行方不明事件をついに見つけたらしい。記事になっている。だからバクマンにはやくバーサの捜索をしろといっていたのに……」

レイはそれを聞きながらせっせと人数分の卵を焼いていた。ただでさえのウィーズリー家の大所帯にルーピン家やシリウス、ハリー、ハーマイオニーが加わっているのだからキッチンはきゅうきゅうだ。


「みんな、ちゃんと荷物が揃っているか確認しなさいよ!」
食後にパーシーとアーサーを見送ると、モリーは叫んだ。ところどころで返事が聞こえる。
学校で必要な荷物のほとんどはモリーとシリウス、リーマスでワールドカップの間に購入をすませていた。
残る必要なものはドレスローブ(何に使うのだろう?)だけだったが、それはナルシッサが請け負ってくれるとのことでレイは詳しくは知らない。


その時、マメフクロウのトクサがピーピーと鳴いた。
「どうしたの?」
トクサは窓の外を見ている。
それからすぐにレイにもワシミミズクが見えた。
「手紙?」
「あ、わたし宛だと思います」
モリーはそう、と頷いて洗濯に向かった。
「お疲れさま」
マルフォイ邸のワシミミズクのエルトゥールを迎え入れた。脚に付いた包みをとり、まず手紙を読む。

レイ

元気にしているか?この前はバタバタ別れることになったので心配している。
会いに行こうかとも思ったが学校がすぐなのでやめた。それまではしっかり休むんだぞ。
包みは父上からだ。中に手紙もあると言っていた。一言返信をくれると喜ぶと思う。それではまたすぐに。

ドラコ

ふんふんと頷きながら読んで、続いて包みに手をのばした。包装紙を破くと箱と封筒が現れる。やはり封筒から手をつけた。


レイ

先日は大変な目にあったとドラコから聞いた。大丈夫だろうか。心配している。
責任の一端を持つものとして大変申し訳なくも思っている。

また連絡をくれ。年内にはまた会えるだろう。

ルシウス

レイは手紙を読みながら小さく笑った。どことなく似ている文面は親子を感じさせた。
そして真顔になる。
責任の一端を持つもの。やはりあのデスイーターのなかにルシウスもいたということか。
箱の中身は上等なチョコレートだった。あとでみんなのおやつにだそうとのんびり考える。

はて、年内には会えるというのはなんのことだろう?ルシウスが出席するほど大きなイベントかなにかあるのだろうか?
そしてそれに関係してドレスローブが必要なのだろうか?

レイはこてんと首をかしげて考えたが、まあ直にわかるだろうと思考を切り替えた。具体的に言わないということは、まだ言えない状況なのだろう。
素直な方の黒髪の少女は割りきった性格だ。



夕食の際にはどうにかアーサーやパーシーも集まれた。
わいわいと過ごす休暇最終日。
レイはモリーと共に腕を振るった料理をみんなに誉めてもらい、楽しく過ごせた。

「ワームテールの調査の報告で時々ダンブルドアを訪ねることになるだろう。俺とリーマスにはまたすぐに会える」
「「本当!?」」
ハリーとレイは本当に嬉しそうに声をあげた。
「ああ、それに今や自由の身だ。何かあったらすぐに一っ飛びで行ってやるからな。ホグズミートに行くときに呼び出してくれてもいい」
シリウスは得意気に言い切った。長年子の親をしているモリーやアーサーは、新米の父親代理にやや苦笑している。
ちなみにハリーのホグズミートの許可証は後見人のシリウスがサインした。これでハリーも晴れてマントを脱げる。
「さあさ、みんなもう寝なさい!明日は寝坊できないんだから!」
モリーの掛け声で子供達はベッドに向かうことになり、その日は早めの就寝となった。


相変わらず不眠症のレイはぼんやりとハリーに聞いた話を思い出していた。
「今宵、戻ってくる……か」

今宵、戻ってくる……今宵殺人鬼が解き放たれて自由の身となる……罪なきものの血が流れ下僕は主のもとに馳せ咲くであろう……

ハリーが霊媒状態のトレローニーから聞いたと言う、恐らく"本物"の予言。
罪なきものはおそらくシリウスで殺人鬼はピーター、そうなるとこの予言は外れた、正確に言うと自分達によって外させられたことになる。
しかしピーターは逃げ出した。
そしてハリーが見たと言う夢。
やはりピーターはヴォルデモートのもとに戻ったということだろうか。

「許されざる呪文、か」
昨年から闇の魔術に関して調べていたときに出てきた単語は、昨夜のリーマスの話でも出てきた。幸いリーマスは、昨日の話ではくらってないようだったが。
いくつかの本を読んで、磔の呪文がクリスマス事件で自分に用いられたものだと知った。
身近な人には勿論経験して貰いたくない魔法だ。リーマスやシリウスは自分達の知らないところで、かの暗黒時代に実は経験しているのかもしれないけれど。

リーマスとの実地訓練はひとまず終了となった。次はクリスマス休暇か来年の夏になるだろう。その頃には自分はもう成人しているから、魔法もつかえる。

とはいえそれまでの間に鍛えなくてはならないな、とレイは考えていた。
昨日の話から、単純に強くなければ自分の身も守れないことはよくわかった。それどころか、強くても時に自分の身は守れないのだとわかった。本当のことをいうと、はたしてミオがどれだけ強かったのか、レイにはわからないけれど。
ただダンブルドアから聞いたリーマスの話ではレイより圧倒的に強いということだったし、ミオ自身もダンブルドアくらいにしか殺されないと発言していた。
レイはその人の代わりになって、戦士の一族として戦わなければならないのだ。
ワームテールが戻ったことでヴォルデモートの復活が早まったとすれば尚更。

「……どうしようかなぁ」
レイは悶々と一晩中悩み続けた。
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