HP and SB 2 ○ゴブレット編

□9 Waltz with me
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ハーマイオニーだけでなく、城中はダンスパーティーの話題で高まっていた。
驚くべきことにレイはどこにいっても廊下や教室の端に呼び出されてパートナーに申し込まれたし、それを丁寧に断る度に罪悪感で疲れるのだった。
ハリーとロンはパートナー探しが難航しているようで、その類いの話題が出ると黙りこむことが多かった。

「なんで一人にならないんだ?」
今では女子は固まって動き、近くを通る男子がいようものならコソコソと話してクスクスと笑った。
「どうやって誘えっていうのさ」
それに完全に翻弄されているのがここに二人。ハリーとロンは女子の動きに辟易していた。
「ようやくエロイーズ・ミジョンが可愛く見えてきたかしら?」
ハーマイオニーは勝ち誇った顔でハリーとロンに言った。
「エロイーズ・ミジョン?だれ?」
因みに今はグリフィンドール用のダンス教室。先ほどロンとマクゴナガルのデモンストレーションが終わったところである。ロンは心身共に疲れたのかぐったりして、端の椅子に腰かけていた。ハリーはハーマイオニーと、フレッドはアンジョリーナと、レイはジョージと組んで、ロンの回りでワルツの練習をしている。
「君とは無縁の子さ」
ロンはため息混じりに言って教室の反対側をみた。レイもその視線を辿ったが、エロイーズ・ミジョンらしき子は見つけられなかった。

「だから早く行動に移せって言ったのよ」
ハーマイオニーは尚も続けた。
「ほんとだぜ、早くしないといい子はみんな持ってかれちまう」
フレッドは悠々と答える。
「兄貴は誰と行くか決めたの?」
「ああ」
「誰」
ロンは疑わしいとばかりにフレッドをみた。
「アンジョリーナ」
「まあ!」
「僕と一緒にダンスパーティーに行くかい?」
アンジョリーナは少しフレッドから離れてフレッドの全身をくまなく見る。
「ええ、行くわ」
それからふたりは何事もなかったかの様にダンスを続けた。
「信じられないよ」
ロンは意味がわからないという顔でフレッドを見た。
「けどハリー、こうはしちゃいられないぜ。いいか、今夜僕たちが寮で会う時には、ふたりともパートナーを見つけている。いいな?」
しかしロンは覚悟を決めたように言った。
「‥‥‥‥わかった」
ハリーも深くそれに頷いた。


ハリーとロンはそれぞれ決意した様に旅立ち、双子はさっさと食事を済ませて悪戯計画に向かい、ジニーはネビルに呼び出されて出てった。因みにネビルはハーマイオニーとレイのそれぞれをパートナーに誘っていて、その度にお断りされているのでジニーに決まればいいなぁとふたりは思った。
そうしてレイとハーマイオニーが談笑しながら食事をとっていると、大広間にざわめきが走る。フラーだ。
フラーの回りには何人かの男子生徒が群がって、それぞれアピールと申し込みを行っていた。

「わぁ、フラー大人気」
レイは感心したようにいうと、ハーマイオニーはため息をついた。
「あなたもおんなじじゃない」
「そんなことないわよ!」
しかし尚もハーマイオニーはため息をつく。
「あなたは校内に常にいて、チャンスが多いから群がられないだけ。人数はかわらないわよ。ツートップって言われてるもの」
「へ?」
ダンスパーティーの人気ツートップ。
レイがドラコにパートナーを決めたことは一目瞭然なものの、それでも少しの望みをかけて申し込んでくる男子は多い。

「やめてよ、わたしフラーみたいに綺麗じゃないわ。わたしのは代表選手効果っていうの」
むむむとレイが表情を固める。
するとハーマイオニーは企みを思い付いたかのような表情を一瞬してからレイに微笑んだ。
「そうよ、レイ。フラーってとっても綺麗よね?」
「ええ、すごく華があるわよね」
レイはうっとりと答えた。
「ダンスパーティーではきっと、綺麗なドレスに化粧までしてもっともっと華やかになるわよ」
ハーマイオニーは畳み掛ける。レイはうんうんと頷いた。
「そして代表選手に女性がふたりな以上、あなたはフラーと比較されることになるわね」
レイは手に持っていたパンをクロスの上にポトンと落とした。
「え?」
ハーマイオニーはにこやかに笑っている。
「当然よ。パーティーの花は女の人だもの。その中心にはフラーと、あなた」
レイの目が見開かれる。
「そんなぁ‥‥」

フラーと比べられたらわたしはその辺に落ちている葉っぱくらいにしか見えないわよ‥‥とレイは呟いた。
「こうなったらとことん引き立て役に‥‥」
「違う!そうじゃない!」
ハーマイオニーは自分の期待する方ではない結論に達しそうなレイを止める。
「ええと‥‥あなたはホグワーツを代表しているんだから、それは許されないでしょう?」
回転の速い頭でうまい言い訳を見つけ出したハーマイオニーは笑顔で続けた。
「だからね、あなたも当日はたっぷりおめかししなきゃ」
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