HP and SB 3 ○騎士団編

□3 allergy
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結局その夜は本部の厨房で話し込むうちに過ぎた。本部に泊まり込んだのは初めてだ。
朝の五時半。上の階で扉が開く音がする。
「ハリーかしら」
それから足音が階下に降りてきて、ゆっくりと扉が開いた。
「おはよう、ハリー」
「おはよう、レイ、シリウス、リーマス、トンクス、おばさん、おじさん──」
ハリーは意外そうに全員を見回して言った。おそらく厨房には誰もいないと思っていたのだろう。

「朝食ね」
おばさんが杖を取りだし、暖炉の方に急いだ。
「お──お──おはよう、ハリー。よく眠れた?」
トンクスはあくびしながら言った。トンクス以外は誰も眠そうな顔をしていない。
ハリーがうんと答えると、トンクスは自分の隣の椅子を引くついでにさらに隣の椅子を倒した。
「わたし、ず──ずっと起きてたの。ここに座りなさいよ」
それからモリーがハリーにトーストを二枚出した。ハリーはそれを食べようと苦戦している。

「スクリムジョールのことで、何かいいかけていたね?」
リーマスがハリーをちらりと見たあとでトンクスに促した。
「あ‥‥うん‥‥あのね、私たち、もう少し気を付ける必要があるってこと。あの男、キングズリーや私に変な質問するんだ‥‥」
その間にもモリーはハリーの見た目をよりよくするための努力に勤しんでいた。

「‥‥それにダンブルドアに言わなくちゃ、明日は魔法省での夜勤、できないわ。私、と──とっても疲れちゃって──」
トンクスは大あくびが止まらない。アーサーが優しく言った。
「私が代わってあげよう。私は大丈夫だ、どうせ報告書をひとつ仕上げなきゃならないし」
トンクスは素直に感謝する。
「レイ──あなたは大丈夫なの?あ──あなたも夜勤でしょう?本部前の──ふぁ」
レイは落ち着いて答えた。
「わたしは大丈夫。寝るのが得意じゃないの」

それからアーサーが、ハリーに担当尋問官について話した。トンクスも彼女は公平な魔女だといってハリーを落ち着かせる。
「カッとなるなよ、礼儀正しくして事実だけを言うんだ」
「法律は君に有利だ」
シリウスとリーマスもハリーを励ました。
ハリーはモリーに入れてもらった紅茶を飲んでいるレイの方を見た。不安そうな目だ。
「レイ、昨日いってたどうにかする用意って──」
「それは私も聞きたかった」

シリウスがハリーに乗っかった。
「証人としてわたしがいくから。そこでうまく話を纏めるわ」
レイが証人としていくことを話した会議に参加していなかったシリウスは驚く。
「君がいくのか?ならなおいい!」
「ならレイも今からでるの?」
ハリーは少しの期待をもってレイに聞いた。やはり親い人にそばにいてほしいのだろう。
「いいえ、わたしはアルバスに呼ばれて入る手はずになっているから、後で行くわ」
「そろそろ出掛けよう。少し早いがここでぐずぐずしているより、魔法省に行っていた方がいいだろう」
ハリーが勢いよく立ち上がった。
「それじゃ、あの‥‥‥‥行ってきます」
ハリーは弱々しく笑った。みんなは力強く頷いた。



バチっという特有の音が玄関ホールに響いた。
「‥‥‥‥アルバス」
そこにいたのは白髭の老人だった。
「開廷が三時間早まった。8時開廷の十号法廷じゃ、キングズリーが教えてくれた」
「なんですって?」
子供たちのうち半数はすでに厨房にいた。
「魔法省、本気でハリーを有罪にする気で来てるわね」
レイの言葉に厨房がざわつく。
「ああ、ハリーに出廷させないつもりか、ダンブルドアの応援を受けさせないつもりか──」
「しかも十号法廷だと?デスイーターの裁判で使うような大法廷じゃないか!くそっ」
リーマスも頷き、シリウスは椅子を蹴った。

「レイ、我々も急がねばならぬ。よいな」
レイとダンブルドアは厨房の扉を開けて玄関ホールに出た。
「ホグワーツから飛ぶのじゃ」
レイはダンブルドアの腕に手を置く。
「ハリーを頼んだぞ!」
「ハリーをお願いね!」
シリウスとハーマイオニーの声が聞こえた。頷く前に世界が変わった。
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