HP and SB 3 ○騎士団編

□10 formation
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土曜日と日曜日は課題と勉強で追われることになった。レイは既に出されている課題をすべて終わらせた上でO.W.Lのために数占いと占い学、マグル学の教科書を読んでまとめた。
ハリーとロンはクィディッチの練習でストレスを発散しているようだった。その為あまり課題は進まなかったが、ふたりの、特にハリーの心の平穏のためには必要だと、ハーマイオニーもレイも理解していた。

月曜日、闇の魔術に対する防衛術では四人ともなんとか静かに過ごした。
幸いなことに、グリフィンドール生はリーマスが人狼であったことに怒りを表したりしなかった。ハッフルパフやレイブンクローの生徒の中には遠巻きにひそひそと言ってくる者もいた。しかしレイがリーマスの実の娘ではないことは周知の事実だったので、誰もレイが満月の夜に変身すると恐れてはいなかった。
スリザリンの生徒はしばしば聞こえるように悪態をついたが、そこにドラコが居合わせた時には急いで口をつぐんだ。ドラコとレイの関係が良好だということは知れ渡っている。



その夜にはハリー、ハーマイオニー、レイ、三人揃ってアンブリッジの罰則を受けに行った。三人とも弱音を吐くことなく、淡々と機械的にそれをこなした。
しかし罰則が終わると、三人はぐったりしていた。アンブリッジに弱味を見せるまいという緊張感に疲れたのだ。

「僕、やっぱりこのことで苦情を言うべきだと思うけどな」
談話室に戻るとロンが低い声で言った。
「嫌だ」
きっぱりと断ったのはハリーだった。
「これを知ったら、マクゴナガルは怒り狂うぜ──」
ロンはなおも食い下がった。
「ああ、多分ね。だけど、アンブリッジが次のなんとか令を出して、高等尋問官に苦情を申し立てる者は直ちにクビにするって言うまで、どのくらいかかると思う?」
ロンはハリーに言い返そうと口を開いたが、何も出てこなかった。しばらくすると降参して口を閉じた。

「あの人はひどい女よ」
ハーマイオニーが低い声で言った。
「とんでもなくひどい人だわ。あのね、私たち、あの女に対して何かしなきゃいけないわ」
ハーマイオニーは最初の語気の強さから一転、遠慮がちにいった。
「何かって?」
レイが聞く。
「アンブリッジは教師として最低よ。あの先生からは私たち、防衛なんて何も学べやしない。だから──私、今日考えていたんだけど……」
やはりハーマイオニーは躊躇いがちに言った。
「考えていたんだけど──そろそろ潮時じゃないかしら。むしろ、むしろ自分たちでやるのよ」
結局ハーマイオニーの言葉ははっきりしない。

「自分たちで何をするんだい?」
手をマートラップの触手液に泳がせたまま、ハリーが怪訝そうに聞いた。
「あのね──闇の魔術に対する防衛術を自習するの」
ハーマイオニーがついに言った。
「いい加減にしろよ」
ロンは呻いた。
「この上まだ勉強させるのか?ハリーも僕も、まだ宿題が溜まってるってこと知らないのかい?しかもまだ、3週目だぜ」
「でもこれは、宿題よりずっと大切よ!」
ハリーとロンは目を丸くしてハーマイオニーを見た。
「この宇宙に、宿題よりももっと大切なものがあるなんて思わなかったぜ!」
ロンが言って、ハーマイオニーを除く三人は吹き出した。ロンはハーマイオニーをなんだと思っているのか。

「バカなこと言わないで。もちろんあるわ」
今やハーマイオニーの顔はSPEWの話をするときのような情熱で輝いていた。
「それはね、自分を鍛えるってことなのよ。ハリーが最初のアンブリッジの授業で言ったように、外の世界で待ち受けているものに対して準備をするのよ。それは私たちが確実に自己防衛できるようにするということなの。もしこの一年間、私たちが何も学ばなかったら──」
「僕たちだけじゃ大したことはできないよ」
ロンが諦めきったようにハーマイオニーの言葉を遮った。
「つまり、まあ図書館に行って呪いを探したり、それを試してみたり、練習したりはできるだろうけどさ──」
今度はハーマイオニーがロンを遮った。

「確かにそうね。私も本からだけ学ぶという段階は通り越してしまったと思うわ。──私たちに必要なのは先生よ。ちゃんとした先生。呪文の使い方を教えてくれて、間違ったら直してくれる先生」
ハーマイオニーの言葉を受けて、ハリーが口を開いた。
「君がリーマスのことを言っているんなら……」
「ううん、違う。リーマスのことを言ってるんじゃないの。リーマスは騎士団の事で忙しすぎるわ。それに、どっちみちホグズミートに行く週末ぐらいしかリーマスに会えないし、そうなるととても十分な回数とは言えないわ」
ハーマイオニーの否定にハリーは顔をしかめた。
「じゃ、誰なんだ?」
ハーマイオニーは大きなため息をついた。
「わからない?私、あなたたちのことを言ってるのよ、ハリー。それから、レイ」
一瞬沈黙が流れた。夜風に暖炉の火がちらつかされ、ガラスが音をたてた。
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