HP and SB 3 ○騎士団編

□14 paralysis
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「……そういうことがしたいなら誰かに言いなさい。ひとりで行くなんてどういうことかわかっているのかい?」
リーマスは低い声で言った。レイは答えなかった。
「とにかくもう戻るんだ。行こう」
リーマスはレイが返事する気がないのがわかると、ため息をついてレイを促した。
その時。
「……エイブリー!」
レイはひとつ向こうの通りを行くデスイーターを見つけた。そのままに駆け出す。
「待て!レイ!」
リーマスはレイを追った。レイは走りながら光線を放つ。
レイに気付いたエイブリーも既に杖をあげていた。
無言で交わされる呪文。その弾きあう音がバチっ、バン、と路地裏に響いていた。

「レイ!」
「……リーマス・ルーピン……!」
リーマスに気がついたエイブリーはさっと黒い煙を纏った。
「ディフィンド!」
レイはなおもまだ攻撃の手を緩めなかった。煙が完全に消えるまで、切り裂き呪文を繰り返し放っていた。
「レイ、リーマス!」
レイが執拗にエイブリーのいた空間を睨んでいると、ビルが走りよってきた。
「エイブリーだね?ふたりが病院から出ていくのと、隣の通りに奴が見えたんだ」
「ああ……」
ビルは油断なく回りを見渡した。
「他にはいなかった様だけど……」

ビルの声を後ろに聞いていると、レイは腕を引っ張られてそちらに向かされた。それからパンっ、という軽い音。
「何やってるんだい!?死にたいのか!」
リーマスに頬を叩かれたのだと理解するのに一秒要した。
「リーマス……落ち着い……」
「勝手に行動して、無闇に敵を追って、何を考えてる!?」
無言で無表情のレイではなく、ビルが焦ってリーマスを懐柔しようとしていた。
「死んでたかもしれないんだ!罠で、敵が他にもいたかもしれない。なのになりふり構わず突っ込んでいく馬鹿がいるかい?」
レイは何も言わなかった。何も言えなかった。
だったらそれでよかったのに。ただそう思った。

「リーマス、一旦病院に戻ろう。レイも、ほら、おいで」
ビルはレイの背中をそっと押して促した。リーマスもしぶしぶ前に進んだ。
その空気とは裏腹に、町はきらびやかなクリスマスカラーで溢れていた。



「えっと……どうしたの?」
帰り道、ハリーは遠慮がちに聞いた。後部座席に座るレイの右頬は明らかに赤く腫れていて、レイ自身不機嫌そうに窓の外を見ている。その横でビルが苦笑していた。ハリーの問いには誰も答えなかった。
そしてその夜、クリスマスディナーが終わったあとに、両者の不満は爆発することになった。




あとがき

リーマス復活(?)回.
次は両者の不満が爆発するらしいですよ←
あっという間に下の154ページまできましたよ!
いかに聖マンゴの件を飛ばしたかがわかるね!けどヒロインは夏休み聖マンゴにいたわけだし、なにも物珍しくないはず.ロックハートとは関わりないし.
ロングボトム夫妻に会えなかったのは残念ですね.でもヒロインの両親がロングボトム夫妻を錯乱させちゃったわけだから、書くなら別の回かな.

さてさて次章は喧嘩のお話です.
またお会いしましょう!
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