HP and SB 3 ○騎士団編

□18 his case
1ページ/5ページ




『ザ・クィブラー』の件で唯一残念だったのが、当然ではあるが、ハリーとドラコの関係が悪化したことである。ハーマイオニー曰く、ドラコがハリーがクィディッチ禁止になる原因をつくったあの試合直後ほどの険悪さらしい。当時はレイは意識を失っていたので記憶にない。しかし険悪とはいえ、ドラコやドラコの友人──父親がデスイーターだと名指しされたもの──はあからさまには突っかかって来なかった。つまり、あの教育令のために、自分が読んだとはいえないためだ。



「ドビーめは信じられません!」
「…………」
厨房でキーキーと屋敷しもべ妖精がないた。
「ドビーめは信じられません!あの意地悪で高慢ちきだったお坊ちゃまが、屋敷しもべ妖精と肩を並べて厨房にいます!ドビーめは信じられません!」
「……ちょっと黙ってくれ」
「ドビーめは前のご主人様が好きではありませんでした!ドビーの前のご主人様は闇の魔法使いでした!」
「…………」
ドビーはテニスボール大の目を揺らしながら言った。

「ハリー・ポッターも先日、ドビーの前のご主人様が例のあの人の復活の際にいたと、インタビューをうけていました!」
「……その話は聞きたくない」
「ドビーは『ザ・クィブラー』を三冊も買いました!」
「…………」
「ドビーめは、そんな前のご主人様のお坊ちゃまが、厨房で料理の練習をしていることが信じられません!!」
「黙れ!!」
ドラコ・マルフォイ少年はうんざりしたように自分の周りをぴょこぴょこ跳ねる屋敷しもべ妖精に叫んだ。他の屋敷しもべ妖精たちがビクッと跳ねる。

「ドビーは黙りません!」
「……これは命令だ、だ・ま・れ!」
「ドビーは命令を聞きません。ドビーは自由な屋敷しもべ妖精です!」
ドビーだけは臆することなる言う。ドラコは胡散臭そうにドビーを見た。
「嘘をつくな。ポッターの言うことは聞いてるんだろう」
ドビーはさらに胸を張った。
「ハリー・ポッターはドビーのお友達です!ドビーはお友達のお願いを聞きます!」
「……あっそ」

ドラコはため息をついて目の前の大根に戻った。桂剥きというのを練習している。
「ドラコお坊ちゃまも友達になりたいのですか?」
「何でもいいからお坊ちゃまっていうのやめろ」
ドラコは大根をボウルに纏めると軽く手を水で濯いだ。
「……やるよ」
「……??」
ドラコはポイ、とドビーになにかを投げた。自分は料理に邪魔で脱いでいたセーターとローブを着る。

「これはなんですか?」
「ネクタイピンだ。お前は身に付けるものが好きなんだろ?」
ドラコはローブをきっちり整えながら言った。
「それは嬉しいのですが……ドビーはネクタイをしません」
「ならその落っこちそうになってるカフェエプロンでも止めておけ」
ドラコは鞄を持って出口に向かった。
「ドラコお坊ちゃま、これでドビーとお坊ちゃまは友達、なのですか?」
ぴょんぴょんと周りを跳ねるドビーを振り向きながらドラコは言った。

「ああ、だから僕のことをお坊ちゃまと呼ぶな。あとは父上のことを他で言うな」
「それはお願いというより命令です、お坊ちゃま!」
ドラコはうんざりした顔をしてから小さい絵画を押し開けて、身を屈めた。
「──あとは、僕がレイのために料理の練習をしてるなんて絶対いうなよ!ポッターにもだ!」
ドビーは一瞬固まってから笑った。ドビーはそれを聞くまで、今年になってからしばしばドラコが厨房に現れる理由を知らなかったのだ。
「わかりました──ありがとう!お坊ちゃま!」
その手で繊細なネクタイピンが輝いた。ちょっとの意地と素直な慣れを込めて。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ