HP and SB 1 ○アズカバン編

□6 穏やかに過ぎていく
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「うわぁ‥‥」
レイは談話室の掲示板を見て実に嫌そうな顔をする。
「そんな嫌そうな顔するなんて珍しいね。どうしたの?」
ハリーが聞くと、レイはため息ながらに話す。
「今週の金曜日から‥‥飛行訓練が‥‥」
「飛行訓練!いいじゃないか!」
羨ましいとばかりにいうロンとハリーとは対称的に、レイは項垂れる。
「絶対無理だわ。向いてないのよ‥‥」
その言葉通り、金曜日の夕食に現れたレイの顔は実に疲れきっていた。
「飛行訓練、どうだったの?」
ロンがソーセージを口に運びながら聞くと、レイは首を横に大きく振った。因みにレイの大広間での定位置は、ロンの前でロンを挟むハリーとハーマイオニーの斜め前、両脇は双子である。
「どうもこうもないわ。何度も箒から落ちて擦り傷だらけよ」
確かにローブから覗く手にも擦り傷が見える。
「なにがだめなの?」
箒にのることは大の得意らしいジニーが不思議そうに聞く。
「上がれっていったら箒は手の中にくる?」
「ええ」
「地を蹴ったら箒は上がる?」
「‥‥ええ」
「角度や高度のいうことは聞く?」
「‥‥ええ」
「じゃあ問題ないじゃない!」
ジニーはますますわからない、という顔をした。
「うーん、分かりやすくいうと、‥‥箒の上で体制を維持できないのよ」
レイは実に困ったように言った。
「どういうこと?」
「‥‥マダムフーチ曰く、腹筋がないから箒の上でまっすぐできなくて、とにかく腕の力に頼っちゃうらしく‥‥」
「「「「‥‥」」」」
「30秒くらいで限界がきて、箒は空中にあるのにそこからくるんと体が回ってそのまま落っこちちゃうっていう‥‥」
「「「「‥‥」」」」
「こら、笑わない」
もう、とレイが口を膨らませると、みんな一斉に笑った。
「‥‥なるほど、箒がうまく扱えなくて落ちるんじゃなくて、箒から勝手に落ちちゃう、と‥‥くく」
「笑いすぎでしょ‥‥」
ハーマイオニーさえも苦笑している。
「体力つけなさい」
「わかってるわよ。飛行訓練はまだまだあるからね、諦めてはないわ」
どんな難関なレポートよりも難しい課題ができてしまったようだった。


グリフィンドールとスリザリンのクィディッチの試合が迫り、ハリーや双子は練習に明け暮れていた。
相手が宿敵スリザリンということもあって、みんなの熱はすごい。
しかし試合前日になって、相手がハッフルパフに変わった。理由は怪我したドラコの腕が完治していないからというもので、明らかな嘘だった。直前に相手が変わったことで、グリフィンドールのクィディッチチームは対策もできておらず、かなり混乱状態にあった。
夕食後大広間を出たところでドラコに遭遇したハリーは全力で睨みをきかせたが、一方のドラコは気まずそうに頬をかいた。
「‥‥すまなかったな。マーカス・フリントが勝手に決めたんだ」
またしても謝ってきたドラコにハリーは唖然とした。人は変わるものらしい。
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