HP and SB 1 ○アズカバン編

□6 穏やかに過ぎていく
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「‥‥ルーピン先生、いらっしゃいます?」
レイはノックの後、開きっぱなしのリーマスの部屋をぴょこんと覗いた。
「おや、レイかい。どうした?ホグズミートにはいかなかったのかい?」
リーマス・ルーピンはいつもの様に穏やかに笑った。
「うん、今日はおやすみなの。最近疲れてたから、学校でお菓子を作って体力温存。それで作ったお菓子、ルーピン先生にもどうかな?って」
にこにこと穏やかに微笑むレイをルーピンは部屋に招き入れた。
「チョコレートクッキーに、マドレーヌに、生菓子はティラミス」
レイは次々とバスケットからお菓子を出す。全てレイの私室で先程作られたものである。
「ほう、流石レイだね。どれもとても食欲をそそるよ」
「ほんと?ルーピン先生最近調子悪そうだから、沢山食べてほしくて」
レイの言葉にルーピンは僅かに目を見開いた。そして穏やかに微笑む目をさらに細めて紅茶をいれる。
「ん?そういえばまたハリー来たの?さっきすれ違ったのだけど」
「ああ、ハリーとはさっきまでいたよ。 先日のクィディッチの件を随分気にしていた」
それを聞いてレイも表情を暗くする。
「あんまり悲しそうな顔をしないでおくれ。ハリーには吸魂鬼を追い払う魔法を個別指導することになったんだ」
これにはレイも表情を一変させて驚いた。
「パトローナス?」
「その通り。よく知っているね」
礼を言ってルーピンに煎れてもらった紅茶をすする。
「本で読んだことはあるわ。でも個別指導って、そんな一筋縄にはいかない魔法なの?」
ルーピンはすでにティラミスを食べ終え、クッキーに手をのばす。
「呪文は難しくない。"エクスペクト・パトローナム"。ただ肝心なのは、"最高に幸せな瞬間の記憶"さ」
ルーピンの手は休まることを知らない。
「そうなんだ。ルーピン先生の最高に幸せな記憶って?」
「‥‥ホグワーツの在学時代さ。間違いなくね」
レイは首をコトンと傾けて頷いた。
「そうね、わたしもそうだと思う。こういった、お茶をしている時間もとても幸せだもの」
そういうとレイはローブから杖を出した。
「エクスペクト・パトローナム!」
すると杖の先から鳥が現れる。
「わぁ、わたしのパトローナスはフォークスなのね。珍しくアルバスの娘らしいわ」
そしてルーピンをみると、ルーピンは完全に固まっていた。
「‥‥君、パトローナムは初めてかい?」
レイはコクンと頷く。
「今この瞬間を想像したわ」
「これは驚いた。君には潜在的な魔力を感じていたけれど、すごいものだな」
そういうとルーピンは手を動かして、クッキー運動を再開した。
皿、口、皿、口。ルーピンの手に迷いはない。
「3年生でこれをマスターできるなんて、驚いてしまったよ」
「確かにわたしは3年生だけど、15歳なんだもの。みんなより魔力は成長していて当然よ」
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