HP and SB 1 ○アズカバン編

□9 bloody noel
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雪だらけの坂を下り、叫びの屋敷に近づいたとき、いち早くその異常に感づいたのはルーピンだった。
「言葉には表せないが、様子がおかしい」
彼からすると在学中嫌というほど通ったその場所から発せられる空気は異常以外の何物でもなかった。
「‥‥‥‥?」
最初何の異常もわからなかったふたりだが、一瞬なにかの音が聞こえた気がした。
「‥‥‥‥‥‥ァ‥‥!」
否、それは音ではなく声だった。
「「「!!!」」」
3人に緊張が走る。
「‥‥時間が惜しい。窓から入ろう。私に続いて‥‥」
ルーピンが渋い顔をしていうと、双子は頷いた。
そしてルーピンは駆け出す。続く二人。
そしてルーピンは俯いた顔の前で両腕をクロスさせ、飛び出た顔の前の肘と膝で大きなガラス窓を盛大に割りながら飛び込んだ。それを見た双子も割り入る。
そこには信じがたい状況が広がっていた。

「エクスペリアムス!」
入ったばかりのルーピンは人影に向かって瞬時に武装解除を放った。しかしよく知る室内をみると、徐々に血の気が引き、足は動かなくなる。
「‥‥なんてことだ、ああ、レイ‥‥」
狭くはない部屋の3分の1ほどの床にはべっとりと血が広がっている。
後ろから入ってきた双子が息を飲むのがわかった。
「レイ!」
ジョージはすぐさまレイに駆け寄る。
部屋の端に横たわる彼女は全身を赤く濡らし、ぼろぼろな衣服からのぞく全ての肌に傷がみえた。
「‥‥エピスキー!エピスキー‥‥」
彼はすぐさま応急措置を始めた。
「‥‥‥‥ジョー‥‥ジ?」
「‥‥わかるのか!?大丈夫だ、もう安心していいぞ」
僅かにレイから反応がある。生きている。
ジョージの膝のうえに乗せられた彼女の顔が少し動く。
「フレ、ド‥‥ルーピンせんせ‥‥」
「喋らなくていいレイ、遅れてすまなかったね」
穏やかにルーピンはいう。彼女が声を発したことで少し冷静になれた。
と、同時に最初の呪文で部屋の反対に追いやった人影への憎悪がましてゆく。
杖を吹き飛ばしたはずの男はルーピンが突っ立っていた間にどうにか杖を拾ったようだった。杖を握る腕に見知ったものを見つける。
「デスイーター‥‥!」
先の暗黒時代を戦い抜いたルーピンは何度となく見かけた骸骨。しかし男自体に見覚えはない。
「大事な教え子に、なんてことを‥‥。スティーピュファイ!」
ルーピンは仕掛けるが男は盾の呪文で防ぐ。その上、
「ディフィンド!」
「プロテゴ!」
ルーピンとフレッドの間を狙って更にレイを狙おうとする。人体をナイフで切るような呪文。恐らくレイがずっと使われていたものだろう。それを間一髪でフレッドが防ぐ。
「アバダけ‥‥!」
さらにレイに対し死の呪文を放とうとする男をルーピンが狙う。
この期に及んでレイを殺そうとする男に二人はキレた。
「コノヤロ‥‥!」
「私たちは見えていないのかね」
そして男とフレッド、ルーピンは呪文を交わし始めた。
「ペトリフィカス・トタルス!‥‥プロテゴ!っくそ!ふざけるなよッ」
「‥‥エピスキー、フェルーラ‥‥」
「俺達の姫によくも!コンファンド!」
男とルーピンは無言呪文にきり変えたため、部屋に響くのはフレッドの声、ジョージの治療の呪文、そして呪文を放ち、打つ音だけ。
「‥‥仕方ないなァ!」
いくらデスイーターでも、激昂したフレッドと手練れのルーピン二人がかりでは部が悪いと判断したのか、
「コンフリンゴ!」
爆破の呪文を唱えると真っ黒な霧となって消えた。デスイーターの姿くらましだ。
男が消えるとその呪文を盾で防ぎ、すぐにレイに駆け寄った。
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