HP and SB 1 ○アズカバン編

□11 強くなる
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「失礼いたします、ルーピン先生」
レイが静かにノックすると、すぐにルーピンはドアを開けた。その顔はレイを見て穏やかになる。
「やあレイ。今ハリーが帰ったところさ」
新学期が始まり一週間が過ぎたあたり。今日はルーピンの初めての特別授業の日であった。どうやらハリーのパトローナスの授業の開始日でもあったらしい。
その事は聞いていたがレイは自身の特別授業をハリーには言わなかった。伝えたのはハーマイオニーだけで、それは復讐に燃えるハリーならこの特別授業に参加したがると思ったからだ。レイはやはりシリウス・ブラックが大量殺人犯だとは考えていなかったので、下手に拍車を掛けたくはない。
またパトローナスで必死なハリーに追い討ちをかけたくもなかった。
「お手間を取らせてすみません。今日からよろしくお願いします」
ハリーのパトローナスと違い、レイの特別授業には明確な終わりがない。場合によっては在学中ずっと続くことになるかもしれない。
「気にしないでくれ。傷はもう‥‥?」
「元通りです。その節は本当にお世話になりました」
「とんでもない。私としては後悔でいっぱいだよ」
ルーピンは苦々しく呟く。
「何をおっしゃるんですか。わたしが今生きているのは間違いなくルーピン先生のおかげですのに」
そういうレイの顔に一切の陰りはない。しかしルーピンはこの少女を守りたい一心らしいミスタースリザリンから、新学期始まって以来、つまり退院して以来、レイがろくに寝れていないらしく、その為に空き教室で彼が寄り添った安心できる状態で仮眠をとっていることを知っていた。というのはその空き教室の使用許可を与えているのがルーピンであるからなのだが、その一切の事情を目の前の少女は知らない。
「さて、今日はまず君が対人戦でどんな魔法を使えるのかを知る必要があると思うんだ」
「なるほど」
「だからまずは私に対して知っている呪文をかけてほしい。気にすることなく、矢継ぎ早にね」
明らかにレイは眉をひそめた。
「先生に、ですか?」
それを見てルーピンは苦笑する。
「そうさ、気にしないで。威力もそのままでいい。私は反対呪文でそれを防ぐから」
それでもまだ嫌そうなので、詠唱はすることと言うとレイは納得した。
「それではいきますね」
レイは鞄を置き杖を構えるとルーピンを見据えて呪文を唱えた。
「エクスペリアームス!」
「!」
「ステーピュファイ!麻痺せよ!」
「インカーセラス!縛れ!」
「アグァメンティ!水よ!」
「コンフリンゴ!爆発せよ!」
「イモビラス、動くな!」
レイは淀みなく呪文を発する。一発目でその威力に驚いたルーピンも、無言呪文でそれらの呪文を相殺し続けた。その姿はどこか楽しそうでもある。
「アビフォース、鳥に!」
「そしてオパグノ、襲え!」
レイが近くの椅子を大きな鳥に変え、ルーピンに向かわせたところでルーピンはにっこりと笑った。レイはそれが終了の合図だと察する。
ルーピンは鳥に杖を一振りすると鳥は椅子に戻り、さらに元の場所に戻った。
それに腰かけてレイも座らせ、お茶を出しながらルーピンは言う。
「驚いたな、君はもうかなりの呪文を使える。そしてその威力もかなりのものだ」
レイは出された紅茶を飲みながら首を振った。
「そんなことはありません。実際この間は手も足も出ませんでした」
「それは練習と本番の違いだね。本番はいきなり現れる。そして相手も自分を倒そうと本気だ」
ルーピンは首を傾けながら暫し考える素振りをした。
「基本の呪文を使いこなせるようになってから、実地訓練をするようにダンブルドア先生は仰った」
「実地訓練、ですか」
「これは数年越しのプランだからね。しかし君の魔法は予想以上だ」
そしてルーピンはレイを見て微笑む。
「次は実地訓練に移ろう」
それを聞いてレイは驚く。
「実地訓練とは、具体的には‥‥?」
「校長のだす課題をクリアしに行く。城の外にね。そこで君は身のこなしや敵の発する殺気を学ぶ。‥‥まあ、まだ具体的にはわからないがね」
レイはそれを聞いて喜んだ。本を読むだけでは学ぶことに限界がある。
「取り敢えず、5日後の土曜日でどうかな?ハリーの訓練もあるからね」
「はい、お願いします!」
「そうだ、私としても良心の呵責があるのだがね、君のナイトたちには内緒だよ?飛んできてしまうだろうから」
ナイトと言われてレイは首をコテンと傾ける。
「あ、フレッドとジョージ」
「と、ドラコ・マルフォイとかにもね。ハリーにはどうせ言わないだろうから」
それを聞いてレイは頷く。
「さて、今日は帰ってよく寝るんだよ?立て続けに魔法を放ったんだ、疲れているはずだから。はい、チョコ。部屋で食べる分」
ルーピンに丁寧にお礼をいうとレイは部屋を出ていった。
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