HP and SB 1 ○アズカバン編

□11 強くなる
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と、ドアからではなくいきなり部屋のなかに来客が現れる。ホグワーツで姿表しができる唯一の人物は、レイの座っていた席にいつの間にか座っていた。
「ダンブルドア」
「訓練お疲れさまじゃ、リーマス。どうじゃったかの?」
ルーピンは杖を振ってカップを代える。
「どうもこうも。基礎練習でするつもりだったところを凌駕してますよ」
「して次は実地訓練かの」
ダンブルドアは大して驚いた様子もなく言った。計り知れないこの人は、レイがそれだけの魔法を使えることをわかっていたのかもしれない。
「まずは日本に向かい、彼女の本当の杖を探すことじゃ」
「いきなり日本ですか」
ルーピンはさすがに驚いて固まる。
「彼女の今の杖はオリバンダーに頼んで作ってもらった間に合わせじゃ。日本のある神社に、ある杖が奉られている。その杖は神の国建国の一族の血を引くもので、強い魔力を持つ者しか手に取れぬ。そして儂はその杖を手に取るのはレイであると考えておるのじゃ」
「‥‥なるほど。つまり、‥‥レイは建国の一族の末裔、と」
ルーピンは薄々気づいていたものの、実際に聞くと心臓の音が聞こえるくらいまで緊張していた。
ダンブルドアは紅茶を一息にのんだ。
「彼女が目覚めた当初取りに行かせるか悩んだが、その時にはまだ彼女の魔力は今ほどではなかったのじゃ。しかしリーマス、気を抜くでないぞ?杖を狙った者たちが神社の側に隠れているやもしれん。そして彼女の魔力がさらに進化すれば、先の事件のようにデスイーターどもがレイに目をつけるであろう。今はまだレイが一族の末裔だとは気づかれておらぬ。トラバースはただ魔力が異常に強い日本人としか考えていなかった。時が遅れれば神社にてデスイーターや杖を狙う者と鉢合わせしてしまうかも知れぬのじゃ」
淀みなく話すダンブルドアにルーピンは苦虫を潰したような顔をした。
「つまり、後にも先にも彼女は狙われ続けるのですか」
ダンブルドアはそのルーピンに一瞬驚いたような顔をしたかと思えば、神妙に頷いた。
「‥‥そうじゃ。それが彼女の血じゃ。レイ本人もまだ知らぬがな」
ルーピンは机の上のカップを凝視した。否、カップなど見ていない。ただ漠然とした事実を睨んでいた。
「そして彼女は将来、ハリーを助ける盾であり、剣になるのじゃ」
ルーピンとしては、彼女に盾にも剣にもなってほしくなかった。争いを好まないあの穏やかな少女には、静かで平和な世界にいてほしかった。たとえそれが、親友の息子を守るためと言っても。
「ハリーを守るために、彼女を戦わせるおつもりですか?」
「‥‥情でもうつったか、リーマス」
「はい」
ダンブルドアのきつい言葉にルーピンは遠慮がちに答える。それでも瞳は揺るがない。
「だから彼女を守ります、ダンブルドア」
ダンブルドアはルーピンを真っ直ぐに見て頷くと、最初と同じようにいきなり消え去った。
「‥‥はあ」
ルーピンは無言で手帳を呼び寄せる。魔法界で使う者は多くないが、ルーピンは書いて整理することが好きだったために手帳を愛用していた。
そして土曜日の夜と日曜日の夕方にレイとハリーの名前を書き込む。2週間後の満月を一瞥して、翌日の予定を確認すると。
「‥‥明日はナイト達の訓練だね」
そこに書かれた名前は4つ。
何だかんだでみんなに頼られるルーピンの日常は忙しい。しかし、彼は彼なりにかなりの充実感を感じていた。
「今なら私もこの瞬間を想像したたけで守護霊が出せそうだよ」
無意識に声に出したその言葉にルーピンは苦笑した。
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