HP and SB 3 ○騎士団編

□1 the Order of the Phoenix
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さらにそれからもカルカロフの捜索は続いた。今やレイが他の団員と同様以上の戦闘能力を持っていることは皆に知られていて、安心して任務を任せられるようになっていた。
リーマスやシリウスはその他の任務に向かわせられることもあった。そういう時には他の団員──例えばトンクスやキングズリーと組むこともあった。
本部には今ではシリウスとリーマスに加え(忙しいリーマスは森の家に帰る間もないので本部に住み込んでいる。)ウィーズリー家とハーマイオニーが住み、子供達はとにかく掃除をさせられていた。レイにとっては幸いなことに、未だに言葉を交わすほどの接触の機会はない。
なぜ幸いかといえば、学生のレイが騎士団に加わることを恐らく彼らは良しとはしないからだ。自分も、と言うに違いないので、今はまだ話したくなかった。

リーマスやシリウスほど仕事が多くないレイは会議や任務以外では森の家に帰って魔法薬を作っていた。擦り傷が絶えない騎士団員のため、もしくは本部掃除のための洗剤だった。それを言い訳に、本部では夕食をとらないで逃げていた。夕食にはロンやハーマイオニーがいるからだ。ハリーからも何度か手紙が届き、現状を教えてくれとあったが、一度も返信をしなかった。



「明日のハリーの護衛はマンダンガスなの?」
会議の後、レイはリーマスに聞いた。
「ああ、そうだよ。‥‥どうかしたかい?」
レイは顎に手を当てて考えていた。
「わたし、マンダンガスが盗品の大鍋の買い付けにいくって話を聞いたんだけれど、それって明日だった様な‥‥」
マンダンガスは今日の会議には参加していなかった。
「まさか、見張りをさぼって買い付けにいくなんてことは‥‥ないと思うけれど‥‥」
リーマスは言いつつも、どんどん自信を失っていく様だった。
二人の間に沈黙が流れる。
「明日わたし、リトルウィンジングに行ってみる。とにかくマンダンガスに会って確認しないと」
リーマスは頷いた。
「わかった。何かあればすぐに知らせておくれ」



暑い日だった。リトルウィンジングではこの日照りと水不足のせいで、ホースでの散水が禁止されたらしい。通りで庭先の花壇の花々は萎れ、車は汚れたまま放置されていた。
ほとんどの人が室内に籠るであろうそんな日に、ハリーは通りをぶらついていた。時にゴミ箱に近づいて、新聞があれば拾って読んでいる。

その疲れきった様子をレイは後ろから見ていた。今日のレイは、深紅の袖無しのリブニットに、小花柄が入った紺の膝丈スカートを着ていた。あの夜以来、何度かマルフォイ家に手紙を書いたが返事はない。ただ一度だけ、任務を終えて森の家に帰ると新しい夏服が入った箱がおかれていた。ふくろうが三羽がかりで運んだ形跡のある大きな箱をみて、レイはナルシッサが怒っていないことだけは理解した。

マンダンガスがきちんと仕事をするのであればそれまでだ。レイは、情報を知ってはならないハリーと接触する気はなかった。
「マンダンガス?」
レイが何もない空間にむけて聞けば、小柄で汚ならしい男が現れた。
「よう、レイ。こんなところでどうした?」
「あなたが盗品の大鍋を買い付けにいくんじゃないかと思って、不安で来てみたの」
レイがにっこり微笑みながらきけば、マンダンガスは豪快に笑った。
「なるほど──いや、大丈夫だ。あんたは今日は休みかい?」
レイが頷くと、マンダンガスはニッと歯を見せる。
「ならゆっくり休みを楽しみな‥‥」
それからマンダンガスは物陰に隠れていった。

レイはなんとなく不安なまま、前にハリー、リーマス、シリウスと訪れたプリペット通りと大通りの角のカフェに入った。お茶をのみながら、せめてハリーが家に入るまでは見守ろうとため息をつく。
何度かお茶を頼みなおせば店主は嫌な顔ひとつせずに長居させてくれた。ハリーはレイの座るガラスの前のところを何度も通ったが、まさかこんなところに居るとはおもっていなかったのか、レイには気がつかなかった。

七時頃になると、ハリーは帰路についた。なんとかダーズリー家も窓から見える。ハリーは家に入るかと思いきや、紫陽花の裏、花壇のところに寝転んだ。レイは見間違えかと思ったが、確かにそこに手をついてから消えた。
その後20分もしないうちに、突如ハリーは立ち上がろうとして──その上の出窓に頭をぶつけた。どういうわけか手には杖。すぐさま窓からダーズリーが現れ、ハリーに凄い形相を向けた。何をいっているのかはもちろん聞き取れない。
それから二人‥‥叔母も入れれば三人はしばし何かを言い争った。それからハリーは何かを吐き捨て、また通りを歩き出す。喧嘩したらしい。

一時間ほどハリーはリトルウィンジングを徘徊していた。レイとしては夜に町を徘徊するのはやめてほしいのだが、ハリーにはハリーなりの理由があるのだろう。
それからハリーはカフェのある角、カフェの反対側に位置する公園で、唯一壊れていないブランコに腰かけた。
レイはただ座っているハリーの背中を見ていたが、9時にカフェが閉まったので、そこを出てゆっくり通りを歩いてまわった。さて、いい加減ハリーは家に帰らないものか。
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