HP and SB 3 ○騎士団編

□2 growing apart
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階段をいくらかあがれば、ハリーが叫び散らす声が聞こえてきた。
だいぶ荒れている。
「──誰も僕にわざわざ教える必要なんてないものな!?」
その合間合間にハーマイオニーが押さえようとする声が聞こえるが、小さくてそこまでは聞こえない。
「四週間もだぞ。僕はプリベット通りに缶詰めで、何がどうなっているのか知りたくて、ゴミ箱から新聞を漁ってた──!」
ギシギシと階段が鳴るが、上にいる子供達が気づく様子はない。
「君たち、さんざん僕を笑い者にしてたんだ!そうだろう?みんな一緒にここに隠れて──」
「ごめんなさい!あなたの言うとおりよ、ハリー──」
ついに階段を上り終えて、ハーマイオニーの声まで聞こえるところにきた。

「ここは一体どこなんだ?」
ハリーが叫ぶのをやめて冷たく聞いた。
「不死鳥の騎士団本部」
「どなたか不死鳥の騎士団が何か、教えてくださいますかね?」
ロンの言葉に嫌みに返すハリー。
「ダンブルドアが率いている秘密同盟なの。前回例のあの人と戦った人たちよ」
「誰が入ってるの?」
「ずいぶんたくさん──僕たちは20人くらいに会ったけど、もっといると思う」
ハリーの質問におどおどしながらロンとハーマイオニーが答えていた。
「それで?」
「それでって‥‥?」
「ヴォルデモート!!やつは何を企んでいる?どこにいる?やつを阻止するのに何をしてるんだ?」
ハリーは少しのことで怒り狂う現状だった。

「言ったでしょう?騎士団は私たちを会議にいれてくれないって。だけど大まかなことなら──」
ハーマイオニーは気を使いながら、フレッドとジョージの発明した"伸び耳"について説明した。レイはドアのまえにしばしば落ちているおもちゃのような耳を思い出した。あれで盗聴していたらしい。
それで騎士団がデスイーターをつけたり、騎士団の勧誘を行ったり、誰かの(ハリーの)護衛任務をしていることを突き止めていた。レイはその手際に内心拍手する。

それからバシバシっという特有の音が聞こえる。
「いい加減にそれやめて!」
ハーマイオニーが諦め声でいった。
「やあハリー、君の甘ーい声が聞こえたように思ったんでね」
「怒りたいときはそんな風に押さえちゃだめだよ、ハリー。全部吐いちまえ」
聞きなれた双子の声が追加される。
「伸び耳を使おうと思ってね。君の声に受信を妨げられたら堪らないからな」
フレッドが言えば、今まで黙っていたらしい声が中でした。
「伸び耳は効果なしよ。ママがわざわざ厨房の扉に邪魔よけ呪文をしたから」
ジニーの声だった。
「どうしてわかるんだ?」
ジョージが聞けばジニーは答える。
「トンクスがどうやって試すか教えてくれたわ。扉に何かを投げつけて、それが扉に接触できなかったら邪魔よけされてるの。階段の上から糞爆弾をポンポン投げつけてみたけど、みんな跳ね返されちゃった」
ジニー‥‥危うく糞爆弾を踏むところだったわよ、と内心がっくりしながら、流石に双子の妹だけあるジニーを思った。

双子の登場でハリーはだいぶ落ち着いた様だった。ウィーズリー家の長男と次男が騎士団員であること、パーシーについては禁句であることなどを双子から聞く。ロンはハリーが喚くのをやめたので、普通の会話を続けようと熱心になっていた。
それからハリーは魔法省のずるさを話しているうちに尋問のことを思い出してしまったらしい。何か他に話がないかと考える素振りが扉の反対でも伝わってきた。

「ええっと──レイはどういう状態なの?僕が手紙をおくっても、"君たちのようにさえ"返ってこなかった。一通も」
「レイは騎士団員なの」
ハーマイオニーが答えると、もう一度緊迫感が増す。
「何だって?」
ハリーの声は再びイライラに満ちていた。
「学生は騎士団に入れないって、君さっき言ったじゃないか」
「「その通りさ」」
それには双子が返した。フレッドが付け加える。
「俺たちにもそれがわからない。さっぱりわからない」

「つまりレイは"特別"なんだろう?」
ハリーが刺々しく言った。
「同じようにヴォルデモートの復活を見たのに、僕は蚊帳の外でレイは騎士団員なんて──」
「わからないけどさ、」
それには意外にもロンが反した
「なんか最近のレイ、ちょっと変なんだよ。僕たちのことも避けてる感じでさ、リーマスは一緒に夕飯を摂ってここに住み込んでるのに、レイはいつも家に帰るしここで食事をとったことは一回もないんだ」
ロンの言葉をハーマイオニーが引き継いだ。
「だから私たち、同じ建物にいるのにこの夏一度もレイと話してないの」
少し秒数があいてからハリーが返事する。

「それもこれも、レイだけ騎士団員だからだろう?なんで──」
その時現れたクルックシャンクスがレイの足元をすり抜けた。ハーマイオニーの声がする扉をカリカリと引っ掻く。
レイがドアノブを回してやると、クルックシャンクスは体で扉を押し開けた。
そっと開くと、その隙間をクルックシャンクスが通ってハーマイオニーにすり寄る。

「あら、クルックシャンクス──まあ!」
その軌道をたどったハーマイオニーの視線がレイを捉えた。
「こんばんは」
レイはとりあえず口を開いた。
「会議は終わったわ。降りてきていいって」
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