HP and SB 3 ○騎士団編

□8 in your arms
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その夜も一睡もすることなく勉強に明け暮れた。流石にこうも毎日寝ていないと体が万全とは言えなくなってきた。考えてみれば、月曜日から五時間ほどしか寝ていない。
まあ今日は土曜日だし、どこかで昼寝してもいいな、とレイは前向きに考えてシャワーを浴びた。髪を乾かしたタイミングでハーマイオニーが目覚める。

それから二人で大広間にいくと、クィディッチの練習がある日だからか、ハリーとロンがすでにそこにいた。
「「おはよう」」
「「おはよう」」
四人は挨拶をかわすと各々に食べ物を手に取った。
「ハリー、随分と嬉しそうね。なにかいいことあった?」
レイが聞くと、ハリーは嬉しそうなまま答えた。
「う、うん……あとでクィディッチが」
レイが頷くと、ロンが言いにくそうに言った。
「ねえ……僕と一緒に、少し早めに行ってくれないか?ちょっと──えー──僕にトレーニング前の練習をさせてほしいんだ。そしたら、ほら、ちょっと勘がつかめるし」
「ああ、オッケー」
ハリーは快く答えた。

「ねえ、そんなことだめよ」
ハーマイオニーは真剣な顔をする。
「二人とも宿題がほんとに遅れてるじゃない──」
しかしハーマイオニーの言葉は、コノハズクが加えてきた日刊予言者新聞で途切れた。
「なにか面白い記事、ある?」
レイはクスッと笑った。ハリーはニヤッとしている。ふたりともロンがハーマイオニーから宿題の話題を忘れさせようとしているのがわかったのだ。

「ないわ……妖女シスターズのベース奏者が結婚するゴシップ記事だけよ」
ハーマイオニーが新聞を広げて読んでいると、ハリーが息を飲むのがわかった。
「えー!これ見てよ!」
ハーマイオニーはそれを聞いて新聞を折り畳み、ハリーが見たと思われる裏面を見た。殆どが広告のページで、マダムマルキンの洋装店はセールをやっているらしい。
「僕、ローブは間に合ってるよ」
ロンが言った。
「違うよ、見て……この小さい記事……」
ロン、レイ、ハーマイオニーは新聞に覆い被さるようにしてそれを読んだ。六行足らずの短い記事だった。

それにはスタージス・ポドモアが8月31日午前1時に魔法省最高機密の部屋に入ろうとしているところをガード魔ンに捕まったこと、それにより有罪とされアズカバンに6ヶ月の刑を食らったことが書かれていた。
「スタージス……」
「スタージス・ポドモアって、頭が茅葺き屋根みたいな、あいつだろ?騎士──」
「シーっ!」
ロンの呟きはハーマイオニーに阻止された。
「アズカバンに6ヶ月!部屋に入ろうとしただけで!」
ハリーはショックを受けて囁く。
「バカなこと言わないで。単に部屋に入ろうとしただけじゃないわ。魔法省で、夜中の1時に一体何をしていたのかしら?」
ハーマイオニーがひそひそいった。

「騎士団のことで何かしていたんだと思うか?」
ロンが言いながら控えめにレイを見た。
「………違うわ、その時期ならわたしは騎士団の情報を知っていたはずだけれど、魔法省の最高機密の部屋に侵入する任務なんてなかった」
レイは諦め半分に言った。
「ちょっと待って。スタージスは僕たちを見送りに来るはずだった。覚えているかい?」
ハリーが考えながらいう。
「勿論。キングスクロスへの護衛隊のメンバーだったの。彼が任務を怠るのはあのとき二回目だったけれど、まさか捕まっていたからだとは思いもよらなかったわ」
レイはどうせハリーの知り得た情報だからと素直に言った。

「はめられたかも!」
ロンが興奮して声を張り上げた。
「いや──わかったぞ!魔法省はスタージスがダンブルドア一味じゃないかと疑った。それで──わかんないけど──連中がスタージスを魔法省に誘いこんだ。スタージスは部屋に入ろうとしたわけじゃないんだ!魔法省がスタージスを捕まえるのに、何かでっちあげたんだ!」
ハリーとハーマイオニーはしばらく黙ってそれを考えていた。ハリーはあり得ないという顔をしたが、ハーマイオニーは感心したような顔をした。
「ねぇ、納得できるわ。そのとおりかもしれない」

より多くの情報を知るレイからすれば、それは間違いだと思えた。
スタージスは恐らく、神秘部にて予言の見張りをしていたのだろう。魔法省に誘い込まれたわけではない。しかし、入ろうとしたとなればそれは任務外だ。もしくは何かの異常を感じて予言の安否を確認しようとしたのだろうか?
「レイは?」
ロンが期待いっぱいの顔でレイを見つめたので、レイはゆっくり大きく首を横に振った。無言のその様子に、ロンはやや面白くなさそうだった。
ハーマイオニーは何か考え込みながら、手にした新聞を折り畳んだ。それから我に返ったように言った。
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