HP and SB 3 ○騎士団編

□8 in your arms
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「さあ、それじゃスプラウト先生の、自然に施肥する灌木のレポートから始めましょうか。うまくいけば昼食前に、マクゴナガル先生の無生物消失呪文のレポートに取りかかれるかもしれない……」
ハリーとロンがぎょっとした。
「課題は夜やるよ、ウン」
ロンが目をおもいっきり逸らしながら言った。
「僕も」
ハリーもそれに便乗する。
「あなたたちって人は!」
ハーマイオニーは呆れと軽蔑の混じった顔で言った。
「いいわ、ふたりでできるもんならすればいいわ!」
ハーマイオニーは言外にハリーとロンに、課題は手伝わないと告げた。

「ハーマイオニー、わたしも今日はちょっとのんびり過ごすことにするわ」
レイはやや申し訳ない気持ちでハーマイオニーに告げた。
「ほら、レイだって──」
「だってレイはあなたたちふたりと終えてる課題の量が違うもの!」
ハーマイオニーはレイには何の非難もなく、ふたりに告げた。
「なら夜レイとレポートしたらいいさ」
ロンはそれに決めた、とばかりに言った。
「わたし、自然に施肥する灌木についてのレポートも、無生物消失呪文についてのレポートももう終えてしまったのだけど……」
きょとんとしながらレイが言うと、ロンはミルクを吹き出し、ハリーとハーマイオニーは目を丸くした。

「無生物消失呪文のってたしか昨日でたやつだよね?」
レイはそうよ、と頷きながら小さく欠伸した。
「昨日の夜捗っちゃって」
レイの様子にハーマイオニーがため息をつく。
「今のあなた、昔のあなたみたいよ」
「ど、どういう意味……?」
レイはさっぱり意味がわからずに顔をしかめた。
「病人みたい。今にも倒れそう」
「それってある意味悪口よ?気づいてる?」
レイは顔をひきつらせながら返した。
「まあいいわ。あなたには確かに、のんびり過ごすことが必要ね」
ハーマイオニーは頷いた。


結局ハリーとロンは早めに競技場に向かった。
レイは部屋に一度帰ってから、結局ベリタセラムの改善の研究を始めてしまった。成果がでないままに昼になり、ふと気になって部屋を後にする。
ドラコに会って話をしなきゃ、と思い立ったレイは校内をぐるぐる回って探した。昼御飯時の大広間にも、図書館にもいない。いつもの取り巻きもいないので寮かとも思ったが、ふと気になってクィディッチ競技場に向かう。


競技場には案の定ドラコと取り巻きがいた。観客席の真ん中に陣取り、グリフィンドールのチームが練習しているのを見ては指をさして何か笑っている。
「グリフィンドールの負ーけ!グリフィンドールの負ーけ!」
レイが近づけば一団がリズムにのせて囃し立てているのがわかった。
「ちょっとそれはセンスがないんじゃないの?ドラコ」
レイは一団の横にひょこっと現れて、その中心にいるドラコに言った。

「レ、レ、レイ……」
ドラコは不味いところをみられた、とばかりに一気に白くなった。元から青白いが。
「ちょっとあんた、何よ!」
何かと問題を起こしてくれるパンジーがきっと食って掛かる。
「ドラコを探していたの。今忙しい?相手チームのシーカーとして分析に忙しいなら出直すけれど」
レイはにっこり笑って言った。
「いや、行く」
「ドラコ!」
即答のドラコにパンジーは不満そうだった。
レイはそれは見てみぬふりをして頷く。
「もう!」
ドラコもそれを無視してレイの肩に手を置いた。レイは一瞬びくっとしたが、何もないように素直にエスコートされて競技場を去った。



中庭の木の下に二人は腰をおろした。
「この前、ルシウスさんにお会いしたの。気にするなって言ってくださってたけれど──あのあとやっぱり大変だった?」
レイはそっと聞いた。
「病院でも言ったが、父上の怪我はお前ほどひどくはなかった。医者を屋敷に呼べば、外に勤めに出ているわけではない父上のことだ、数日籠れば問題ない」
ドラコは穏やかに答えた。

「あの──わかっているの、わたしは騎士団の方だからあまり多くを聞いたらいけないって。でも──その、闇の帝王からルシウスさんが叱りを受けたりしなかった?わたしたちが逃げ切ったことや、ルシウスさんがわたしを庇ったことで」
レイは本当に不安そうに聞いた。ドラコは苦笑する。
「まさにマルフォイ家は帝王の方だから多くを言うことはできない。だが大丈夫だ、父上はデスイーターの中でもはっきり言って位が高い」
レイは芝生の一点を見ながら思い出した。
「確かに帝王は、ルシウスさんのことを友とまで呼んでいたわ」

そこからしばらく沈黙が流れた。
それを破ったのはドラコだった。
「手紙を返せなくてすまなかった。そういう決まりになっていたんだ」
「ううん、いいの。わかってたから」
レイは聞いた。
「シシーさんは元気?」
ドラコは頷いた。
「ああ、母上もお前のことを心配していた。お前の意識が戻らない間にも、父上から事情を聞いていたらしいからな。夏休みにも、よく写真を見ていたぞ」
「そっか……そんなに思ってくれてるのね……」
レイはしばらく会えていない上品な婦人を思い出した。

「夏休み、時々お前の情報が入ってきていた」
ドラコも空の一点を見ながら言った。
「どこで誰と誰が戦った、とかの話だ」
「ドラコ……」
ドラコは顔を歪めていた。
「無力な自分が不甲斐ない。が、仮に戦闘にでられたとしても僕とお前は敵なんだ」
レイはドラコの横顔を見ていた。
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