HP and SB 3 ○騎士団編

□8 in your arms
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寮に戻るとハリーたち三人は何とも言えない空気でレポートに向き合っていた。
「どうしたの?」
レイが行くと、ハリーがソファーの半分を譲ってくれる。
「あら、だいぶ改善したみたい」
ハーマイオニーはレイを見て満足げに頷いた。
「バカのパーシーから手紙が来たのさ」
ロンは刺々しく言った。
「僕がパーシーみたいに首席になって魔法省に入るには、ハリーとレイとつるむのをやめて、アンブリッジに取り入れって。あと自分の名前が明日の朝刊に載るってさ」
「あー……」
レイは苦笑しながら暖炉を見た。そこには破り入れられた羊皮紙らしきものが薄い炭になって燃えている。

「あの世界中で一番の大バカ野郎──」
「わたしもレポートを手伝うわ」
レイはロンの集中を取り戻させようと急いで話題を変えた。
「ええ……ああ、ありがとう」
レイはハリーとロンがシニストラのレポートをやっている間に、ハーマイオニーとマクゴナガルのレポートの添削をした。
「ああ、君たちは命の恩人だ──僕、なんて言ったらいいか──」
「あなたたちに言ってほしいのは、"僕たちはもう決してこんなにギリギリまで宿題を延ばしません"、だわ」
気分がいいレイは、ハーマイオニーの言葉に笑った。


しばらくは四人が羽ペンを動かす音と、本のページをめくる音しか聞こえなかった。気がつけば談話室には四人しかいない。
「え──」
レイがハリーの小さな呟きに気がつけば、ハリーは椅子から降りて焼けこげだらけの暖炉マットに両ひざをついていた。
「どうしたの?」
レイは怪訝そうに聞いた。
「たったいま、シリウスの顔が火の中に見えたんだ」
ハリーは冷静に話した。

「トライウィザードトーナメントの時にそうやって話したのだったかしら。わたしは一回も遭遇してないけれど──」
レイは聞いた話を思い出すように言った。
「でもまさか──シリウス!!」
否定しかけたハーマイオニーが叫んだ。暖炉の火の中にはシリウスの首が座っていた。
「みんながいなくなるより前に君たちの方が寝室に行ってしまうんじゃないかと思い始めたところだった。一時間ごとに様子を見ていたんだ」
シリウスはにやりと笑った。
「一時間ごとに火の中に現れていたの?」
ハリーは半分笑いながら言う。
「ほんの数秒だけ、安全かどうか確認するのにね」
シリウスの言葉にハーマイオニーが言った。
「よくあなたの親友が許したわね」

「リーマスとは任務が別でね、暫くは会う予定もない」
レイは、ん?と顔をしかめた。
「え?なら脱狼薬はどうなっているの?」
途端にシリウスは慌てたように取り繕った。
「ああ、脱狼薬を飲まないといけない時期にはムーニーも本部に戻る。どうせあまり動けなくなるからな」
レイは腑に落ちないながらも否定する要素もなく、頷いた。

「ハリーの手紙に答えたかったんだ。手紙をかけば暗号ですら破られる可能性がある。去年は何かあればすぐにホグワーツに行けたが、アンブリッジがいる今年はそうはいかない」
「シリウスに手紙を書いたこと、言わなかったわね」
ハーマイオニーがハリーに非難の目を向けた。
「忘れてたんだ。そんな目で僕を見ないでくれよ、ハーマイオニー」
ハリーの言葉に嘘はないようだった。
「あの手紙からは誰も秘密の情報なんて読み取れやしない。そうだよね、シリウス?」
「ああ、あの手紙はとても上手かった」
シリウスはにっこり笑った。

「とにかく、邪魔が入らないうちに急いだほうがいい。君の傷痕だが、痛むのがいい気持ちじゃないのはよくわかる。しかしそれほど深刻になる必要はないと思う。去年はずっと痛みが続いていたのだろう?」
シリウスは真面目な顔に切り替えて言った。
「うん。それにダンブルドアはヴォルデモートが強い感情を持ったときに必ず痛むと言っていた。だからわからないけれど、たぶんあの日あいつが本当に怒っていたとかじゃないかな」
ハリーはその名にギクリと震えるハーマイオニーとロンを無視して言った。
「そうだな、あいつが戻ってきたからには、もっと頻繁に痛むことになるだろう」
シリウスは頷く。

「ならアンブリッジとすれ違ったこととは関係がないと思う?」
ハリーは探るように聞く。
「ないと思うね。アンブリッジのことは噂でしか知らないが、デスイーターでないことは確かだ──」
シリウスはきっぱりと返した。
「デスイーター並みにひどいやつだ」
ハリーの言葉にレイ以外の三人は深く頷いた。
「そうだ。しかし世界は善人とデスイーターの二つに別れるわけじゃない」
シリウスは苦笑いする。
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