HP and SB 3 ○騎士団編

□9 I must not tell lies.
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「授業査察はもう受けたか?」
フレッドが聞いた。
「まだよ。受けたの?」
ハーマイオニーがすぐに反応した。
「たったいま、昼食の前。呪文学さ」
ジョージが言葉を引き継ぐ。
「「どうだった?」」
ハリーとハーマイオニーの声が重なった。フレッドが肩をすくめる。
「大したことはなかった。アンブリッジが隅の方でこそこそクリップボードにメモを取ってたな。アシリアに2.3質問して、授業はいつもどんなふうかと聞いた。アシリアはとってもいいと答えた。それだけだ」
「フリットウィック爺さんが悪い点を貰うなんて考えられないよ。生徒全員がちゃんと試験にパスするようにしてくれる先生だからな。午後は誰の授業だ?」
ジョージがハリーに聞いた。
「トレローニー──」
ハリーはげっという顔をしながら言った。
「そりゃ紛れもないTだな」
「──それにアンブリッジ自身もだ」
「さぁ、いい子にして今日はアンブリッジに腹を立てるんじゃないぞ」
「君がクィディッチの練習に出られないとなったら、アンジェリーナがぶちギレるからな」
双子はリズミカルに交互に言った。ハリーは無言で頷いた。


一時間の空きコマのあと、数占いだったハーマイオニーと共にレイは、占い学での視察についてハリーたちから聞いていた。
「あれは完全にアウトだよ」
しかし意見を述べる間もなくアンブリッジが現れる。
「杖をしまってね」
もしかしてと期待して杖を出していた生徒はすごすごと鞄にもどした。
「前回の授業で第1章は終わりましたから、今日は19ページを開いて、『第2章 防衛一般理論と派生理論』を始めましょう。おしゃべりはいりませんよ」
一斉に19ページを開きながら、生徒全員が同時にため息をついた。

レイは適当に開いた適当なページに目を移したが、その時、横で不穏な空気を感じる。
ハーマイオニーがまたもな手をあげていた。アンブリッジも気づいていたが、あちらもそうした事態に備えて戦略を練ってきたようで、ハーマイオニーの真正面で身を屈めると囁くように言った。
「ミスグレンジャー、今度は何ですか?」
「第2章はもう読んでしまいました」
「さあ、それなら第3章に進みなさい」
「この本は全部読んでしまいました」
同じく本を読み終えていたレイはハーマイオニーに視線でやめよう、と訴えかけた。しかしハーマイオニーはこちらを見ることもしない。

「それではスリンクハードが第15章で逆呪いについて何と書いているか言えるでしょうね」
アンブリッジは目をパチパチさせてから言い返した。
「著者は逆呪いという名前は正確ではないと述べています。著者は、逆呪いというのは自分自身がかけた呪いを受け入れやすくするためにそう呼んでいるだけだと書いています」
アンブリッジの眉が上がった。意に反して感心してしまったのだとレイにはわかった。

「でも私はそう思いません」
アンブリッジの一瞬感心していた目が冷たくなった。
「そう思わないの?」
「思いません。スリンクハード先生は呪いそのものが嫌いなのではありませんか?でも私は防衛のために使えば呪いはとても役に立つ可能性があると思います」
アンブリッジは囁くことを忘れて身を起こした。
「おーや、あなたはそう思うわけ?さて残念ながら、この授業で大切なのは、ミスグレンジャー、あなたの意見ではなくスリンクハード先生のご意見です。もう結構──」
アンブリッジは教室の前にもどり、上機嫌を殴り捨て、言った。
「ミスグレンジャー、グリフィンドールから五点減点しましょう」
途端にクラスが騒然となった。
「理由は?」
「ハリー!」
怒って声をあげるハリーをレイは押さえた。
「埒もあかないことでわたくしの授業を中断し、乱したからです」
アンブリッジは澱みなく言った。

「わたくしは魔法省のお墨付きを得た指導要領でみなさんに教えるために来ています。生徒たちにほとんどわかりもしないことに関して自分の意見を述べさせることは、要領に入っていません。これまでこの学科を教えた先生方はみなさんにもっと好き勝手をさせたかもしれませんが、誰一人として──クィレル先生は例外かもしれません。少なくとも、年齢にふさわしい教材だけを教えようと自己規制していたようですからね──魔法省の査察をパスした先生はいなかったでしょう」
レイは言外にリーマスを否定されいらっとしたが、それどころではなかった。ハリーが勢いよく突っかかっていくところだったのだ。
「あぁ、クィレル先生はすばらしい先生でしたとも!ただちょっとだけ欠点があって、後頭部からヴォルデモー……」

バーン!!

教室に爆音が響いて、ひとつ大きな花火が散った。
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