HP and SB 3 ○騎士団編

□9 I must not tell lies.
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「あんたは──!あんたって人は!」
廊下にレイがついたときには、運良くそこにいたフレッドとジョージが二人がかりでハリーを引き留めていた。
「やめろ、ハリーどうした!?」
「クィディッチのことを考えろ!」
二人はハリーがアンブリッジに殴りなかるのを押さえている。
「こいつが──リーマスの秘密を、日刊予言者新聞でばらしたんだ──」
ハリーは双子に唸った。双子は目を見開く。
「やめてハリー!この女には殴る価値もないわ、ゴキブリ以下よ!」
授業に関して誰よりもフラストレーションの溜まっていたハーマイオニーも吐き捨てた。

レイはアンブリッジを目の前にすると、ヒヤリとした感覚が足先から上ってくるのに気がついた。
「ドローレス・ジェーン・アンブリッジ……」
大広間の前のホールには、ハリー、ロン、ハーマイオニー、フレッド、ジョージ、リーの他に四人を追ってきたラベンダーとパーバティ、ディーン、ネビルがいた。さらに偶然駆けつけたのか見に来たのかはわからないが、セドリックやドラコ、ルーナ、アーニーやジャスティン、ハンナ、ジニーにマイケル・コーナーもいた。
その全員の視線をもろに受けながら、レイはアンブリッジの目を睨み付けていた。

「46歳、独身、身長161センチ体重88キロ。スリザリン寮出身、在学中はあまり目立たない存在で容姿に自信もなかったが、純血であると寮の中では主張していたため市民権を得ていた。が、実際は魔法省員で純血の父とマグル出身の母との間に生まれた半純血。ちなみにスクイブの弟がいる」
アンブリッジが目を見開いた。
「O.W.Lでは8科目合格も、そのうち5科目はacceptableでギリギリだった。しかし、権力への執念からインターンシップで奔走し、魔法省に入省。五年生の頃には長年想い続けていたジューク・バークに告白するも、玉砕。六年生になる前の夏休み、ノクターン横丁にて入手した愛の妙薬でジュークと交際に至るも、愛の妙薬が切れた際には彼からありったけの暴言を吐かれて振られることになった。これが最悪の記憶──」
アンブリッジは恐れながらも目を外すことができないようだった。

「その後彼がレイブンクローの女の子と交際を始めると、その彼女にしばしば脅迫状や呪いを送り付けた。また、その女の子を真似して髪の毛を黒くし、伸ばしていた」
「やめなさい……何をいっているのかさっぱりわからないわ」
「そして最近では、自分を認めてくれるファッジ大臣にお熱。でももしファッジが大臣をやめることになれば、興味はなくなる。今年のファッジの誕生日にはピンクの──」
「やめなさい!!」
アンブリッジの声が響いた。

「何をいっているの!やめなさい!」
「心を閉じればいいのに。できないことはないでしょう?ああ、できないのかしら。N.E.W.Tで闇の魔術に対する防衛術、落第してますものね。なのに担当教員だなんて笑ってしまいます」
レイは冷ややかに笑って言った。
「人の秘密を言おうが気にしないんでしょう?ならばあなたが自身の担当科目の落第生だって、言ったって構わないじゃありませんか。あなたは授業で魔法を使わないんじゃない、"使えない"のだと」
今では玄関ホールにはさらに多くの人が詰めかけていた。

「リーマスは、人狼ですけれども。脱狼薬を用いて危険性を除去して教壇に立っていました。優しく生徒を叱ることがあっても、体罰を連日六時間、休憩なしに与えるような真似はしませんでした。因みにいえば、N.E.W.Tの闇の魔術に対する防衛術ではoutstandingの成績を修めました」
レイの言葉に、詰めかけた生徒たちの表情が変わった。
「わたしは闇の魔術に対する防衛術の先生として、"太りすぎのガマガエル"より"優しい狼"の方が適任だと思うわ」


アンブリッジはたっぷり10秒間は目を右往左往させていた。それからフン、と鼻を鳴らしてから言いきった。
「罰則です。レイ・ハヅキ・ルーピン。折角今日で終わりだったのに残念ね、あと2週間続けましょう。それから失礼な暴言を吐いたハリー・ポッターとハーマイオニー・グレンジャーも1週間。グリフィンドールから50点減点」
レイはアンブリッジの目を睨み続けていた。
「──今夜五時よ。遅れないように」
アンブリッジはその目を避けるように立ち去った。
しばらく生徒たちは動かなかった。

「レイ」
声をあげたのは意外な人物だった。
「ディーン……」
「僕が今年のあの人の授業で最初に言ったこと、今でも変わらないよ。ルーピン先生は今までで最高の先生だった」
レイは絶対零度の視線を一瞬でほわりと溶かした。
「ありがとう」
それからハリーたち四人が新聞を放り出してきた席に戻りだすと、生徒たちも動き出した。
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