HP and SB 3 ○騎士団編

□9 I must not tell lies.
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「急いで夕食を食べないと。あと30分もないわ」
ハーマイオニーはさくさくとノートや新聞をしまうと、まだ軽食しか乗っていない大広間のテーブルならマフィンを回収した。
「ロン、夕食の時に軽く何か持って帰れる?罰則のあとに課題もしないといけないんですもの」
「オッケー、フレッドとジョージに頼めばなんとでもなるさ」
ロンは何でもないことのように言った。
「ちゃんと課題進めておくのよ、ロン」
レイも何でもないことのように言う。
「ウン…オッケー」

「ねえ」
その時、そのよそよそしい雰囲気に割ってはいる声があった。
「………ラベンダー」
それはラベンダー・ブラウンだった。
「レイ、ハーマイオニー。あのときは酷いこと言ったかもしれないけれど……」
ラベンダーが言っているのは始業式の日のことだろう。正直レイはあまり多くの会話は聞いていないのだが。

「今日の話を聞いてて、私、考えが変わったの。あなたたちのこと信用するわ。だってあの人を送り付けてくるなんて、やっぱり魔法省はおかしいわ」
ラベンダーははっきりと言った。
「さっき、わたしが言っていたことを信じるの?」
レイは慎重に聞いた。
「あの人、否定もできなかったじゃない」
ラベンダーの答えにレイは口角をあげた。それから椅子から立ち上がると、ラベンダーはレイに抱きついた。
「ごめんね」
「ううん…」
それからラベンダーはハーマイオニーにも抱きついた。
「ごめんね」
「私もキツく言ってごめんなさい」
ラベンダーの横ではほっとしたようにパーバティが笑っていた。



廊下をばたばたと走りながら、ハリー、ハーマイオニー、レイはアンブリッジの部屋に向かっていた。
「そう言えば、さっきレイ、体罰って言ってたけど──」
ハリーは走りながら言った。
「ええ、黙っていたことはごめんなさい。でもあなたたちも今からわかってくれると思うわ──つい意地を張っちゃうってこと」
「それって具体的には──」
レイもハーマイオニーも走りながら喋る。
「先に言ってもいいけど、時間はなさそう──もうすぐそこよ」

三人は急ブレーキをかけたようになんとか止まって、アンブリッジの部屋の前で肩で息をした。それからレイが代表してノックする。
「グリフィンドールの──ルーピンです」
「お入り」
三人は部屋に足を踏み入れた。


「さぁ、いらっしゃい」
ハリーとハーマイオニーは目をパチパチさせていた。ピンクショックにやられている様だ。
「書き取りの罰則をしてもらいます。ミスルーピン、あなたはわかっているでしょう?どうぞ始めて」
レイは淡々といつものテーブルに行くと、無言無表情で罰則を開始した。


「さて、お二人さんは初めてね。どうして罰則を受けることになったと思う?」
アンブリッジは少女の様な声でかわいらしく聞いた。
「先生はさっき、失礼な暴言を吐いたから、とおっしゃいました」
ハーマイオニーは澱みなく答えた。
「そう。でもね、元々はあなたたちがわたくしの授業を邪魔してくるからなの。授業のやり方に文句を言ったり、危ない嘘でみんなを惑わしたり」
「僕たちは嘘なんてついてない」
ハリーは唸った。

「いいでしょう。ミスターポッターはそちら、ミスグレンジャーはそちらにどうぞ」
アンブリッジはレイの隣のテーブルを指した。やや大きめのテーブルで、二人は向かい合って座る。
「わたくしの羽ペンを使って、言葉が滲み込むまで書き取りをしてちょうだい。そうね──I must not tell liesと」
「──僕は嘘をついてはいけない」
ハリーとハーマイオニーは顔をしかめて羽ペンを手に取った。
「インクがありません」
「インクはいらないのよ」
アンブリッジは軽やかに答えた。

ハリーが視線でレイに疑問を投げ掛けていた。レイは羽ペンを動かしながらそれに気がつく。ハリーは恐らく、これが体罰だと理解できないのだろう。
「始めて」
アンブリッジの言葉を受けて、ハリーとハーマイオニーが羊皮紙に向かった。
その数秒後。
「………っ!」
「………!?」
ふたりがおどろいて顔を見合わすのがわかった。レイが横目で見ると、ふたりとも右手の甲を見ている。ふたりの文字はそこに刻まれているらしい。
「……どうかした?続けて」
アンブリッジは少女の声のまま言った。
目視できるかぎりでは、ハリーがアンブリッジを睨んでから羊皮紙に向かい、それを見たハーマイオニーも羊皮紙と向き直った。
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