HP and SB 3 ○騎士団編

□9 I must not tell lies.
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「さぁ、見てみましょう」
日付が変わる頃になると、アンブリッジはハリとハーマイオニーのテーブルに近づき、まずはハーマイオニーの手を取った。それからハリーの手を同じ様に確かめる。
「チッチッ、まだまだ。まあ一週間ありますからね」
それからレイに近づくと、ねっとりとした手つきでレイの左肩を触ってまわった。レイは表情を変えない。
「あなたも強情ね。まあいいわ、三人とも、また明日」
三人は無言で荷物を纏めた。そして挨拶もせずに部屋を出た。



暫くは三人無言で歩いていた。
しかしグリフィンドール塔に近づいたところで、ハーマイオニーはレイの手を取った。
「……わたしはそこじゃないの」
まじまじとレイの手の甲を確認するハーマイオニーにレイは笑いかけた。
「どうして言わなかったの!あなた、ただの書き取りだって言ってたじゃない!」
ハーマイオニーはレイをきっと睨んだ。
「やめろよハーマイオニー、僕はレイの気持ちがわかる。僕がレイでもきっと隠したさ」
実はレイの最大の理解者でもあるハリーが言った。

「ごめんね、ハーマイオニー。ありがとう、ハリー」
レイは小さく返した。
「本当に最低な女だわ。ゴキブリ以下って間違ってない!あのリータ・スキータと同レベル、もしかしたらそれ以下ね!」
ハーマイオニーは悪態をついた。
「レイ、この罰則について、誰かに言わなかったの?例えばマクゴナガル先生や、リーマスに」
レイは首を振った。
「言いっこないさ。それじゃまるであいつに屈したみたいだ」
ハリーはレイの肩を持つ。
「ならハリー、あなたシリウスにも言う気はないってこと?」
「もちろん」
ハーマイオニーは一瞬呆れたようだったが、何も言わなかった。負けず嫌いなハーマイオニーだ、きっとふたりの主張に共感するところもあるのだろう。

「とにかく、帰ってから課題を済ませなくちゃ。もう、今晩は何時に眠れるのかしら」
「明日は土曜日だよハーマイオニー。今晩はいいじゃないか」
「……そうね」
ハーマイオニーはため息をついて課題を延期することに決めた。
「レイ、あなたよく毎日この罰則をくらってて、ちゃんと勉強できるわね」
ハーマイオニーの視線にレイは適当にとぼけた。
「前にも言ったでしょう?手抜きするしかないって」
「嘘おっしゃい。魔法薬学もだし、変身術の課題でもOを貰ってたじゃない。私見たわ」
レイは何も言えずに肩を竦めた。



「本当にあのばばぁ……」
寮に戻ると、金曜日だからかまだロンはぴんぴんしていた。レイが部屋からマートラップのエキスとやらを持ってきてボウルに入れた。それを僕とハーマイオニーに差し出す。
「これ凄いよ。痛みがすーっと引いていく感じ」
「騎士団のお気に入りよ」
手をボウルに浸ければ効果はすぐに現れた。レイは苦笑しながら答えた。

「ところでレイ。さっきのアンブリッジの情報は騎士団から得てたの?」
レイはハリーの質問の意味を理解するのにしばらくかかった様だった。
「ああ、あれね。あれは──開心術よ」
レイは一瞬躊躇ってから答える。
ハリーは心臓がドキリと跳ねるの感じた。そんな魔法をレイが使えるとは考えていなかったのだ。
「え?それって例の、心のなかを覗く魔法?」
「おったまげー」
ロンも目を丸くしていた。

「そうじゃないかと思ってたけれど。でもレイ、あなた呪文も唱えなかったし杖も持ってなかったわ。そんなことって相当の玄人じゃなきゃできないはずよ」
ハーマイオニーの言葉を受けて、ハリーとロンの目に疑いの色が浮かんだ。
もしかしてレイは僕の心のなかを覗いたことがあるのではないか。
僕がしばしば見る夢や、苛立ちや、チョウへの気持ちを知っているのではないだろうか。
そう言えばクリスマスダンスパーティーで、レイはハリーにチョウについて助言した。あれは単に女の子の勘かと思っていたが、もしかしたら開心術によるものだったのかも──。

「開心術を使ったのは始めてよ。本当に。安心して、あなたたちに掛けたりしてないわ」
レイは首を振りながら答えた。
「掛けられる時って、わかるものなの?」
ハリーは慎重に問う。レイが本当のことを言っているのか、確証が欲しかった。
「今何を思っているかとか、浅いものの時には──つまりマグルでいう読心術に近いもののときには、わからないこともあるらしいわ。それこそ、玄人がかければね。でも普通はわかるものよ、相手が覗いている情景が自分にも浮かぶから」
その言葉を聞いて、ハリーはロンと共にほっと息をついた。
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