HP and SB 3 ○騎士団編

□10 formation
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「僕たちの何のことを?」
ハリーが言った。
「あなたたちが、闇の魔術に対する防衛術を教えるって言ってるの」
「そいつはいいや」
ハーマイオニーの提案にぽかんとするハリーとレイとは対照的に、ロンは一瞬顔をしかめて考えてから、明るい口調で言った。
「何がいいんだ?」
ハリーは度肝を抜かれて言った。

「君たちが、僕たちにそいつを教えるってことがさ」
レイは頬に手を当てて考えた。その間にもハーマイオニーがハリーに説得を試みていた。
「あなたは闇の魔術に対する防衛術で学年トップだったわ」
「違うよ、どんなテストでも──」
「三年生のとき、あなたは私に勝ったわ。あの年に初めてこの科目のことがよくわかった先生に習って、しかも初めて同じテストを受けたわ。私はあの試験で3位だったの。2位がレイだった。トップはあなただったのよ、ハリー。それにテストの結果よりも、あなたがやって来たことの方が重要だわ!」
ハーマイオニーは戸惑うハリーの説得に全力を掛けていた。

「あのさ、僕自信がなくなったよ。こんなに血の巡りの悪いやつに教えてもらうべきかな」
ロンはニヤリと笑ってからゴイルが必死に考える真似をした。
「うう……一年生──君は例のあの人から賢者の石を救った」
「だけどあれは運が良かったんだ。技とかじゃないし……」
ロンはハリーを遮って続けた。
「二年生、君はバジリスクをやっつけて、リドルを滅ぼした」
「うん、でもレイがフォークスを送ってくれなかったら……」
ロンが一段と声を張り上げて続けた。
「三年生、君は百人以上のディメンターを一度に追い払った」
「ああ、だってまぐれだよ。タイムターナーがなかったら……」
ロンは叫んだ。
「四年生、君はまたしても例のあの人を撃退した!」
「こっちの話も聞けよ!」
ハリーが叫び返した。

「黙って聞けよ、いいかい?そんな言い方をすれば、なんだか凄いことに聞こえるけど、みんな運が良かっただけなんだ──半分くらいは自分が何をやっているのかわからなかった。たまたま思い付いたことをやっただけだ。それにほとんどいつも、何かに助けられたし──わかったような顔をしてニヤニヤするのはやめてくれ!」
レイはハリーの言葉を受けてロンとハーマイオニーを見た。確かに二人ともニヤニヤしている。ハリーの癇癪が爆発した。
「君たちはわかっちゃいない!君たちは──どっちもだ──あいつと正面きって対決したことなんかないじゃないか。まるで授業なんかでやるみたいに、ごっそり呪文を覚えて、あいつに向かって投げつければいいなんて考えているんだろう?ほんとにその場になったら、自分と死との間に、防いでくれるものなんか何もない。自分の頭と、肝っ玉と、そういうものしか──ほんの一瞬しかないんだ。殺されるか、拷問されるか、友達が死ぬのを見せつけられるか、そんな中でまともに考えられるもんか──授業でそんなことを教えてくれたことはない。そんな状況にどう立ち向かうかなんて──。それなのに、君たちは暢気なもんだ。まるで僕がこうして生きているのは賢い子だったからみたいに!」
友達が死ぬのを見せつけられるか、のところでレイは内心、わたし生きてるよ!と突っ込んだ。確かに、あの時はハリーに後を任せて死のうとしたけれど。

「ハリー……」
ハーマイオニーがおずおずと言った。
「わからないの?だから……だからこそ私たちにはあなたが必要なの……私たち、知る必要があるの。ほ、本当はどういうことなのかって……あの人と直面するってことが……ヴォ、ヴォルデモートと」
レイは目を見開いた。ハリーもロンも驚いていた。ハーマイオニーがヴォルデモートと名前を口にしたのは初めてだった。
「レイはどう思ってるの」
ハーマイオニーの言葉に落ち着いたハリーが、腰を下ろしながら言った。
「……ハリーがやるならわたしは協力するわ。自分にできることをやりたいと思うもの。ただ、わたしがヴォルデモートと対峙したのはあの一度だけ。だから、趣旨からして、あなたがいないとなりたたないから、ハリーがやるなら、ね」
レイは落ち着いた表情で言った。
「二回だろう?君は昔ヴォルデモートと会ってる」
ハリーは低く付け加えた。
「それならさっきのロンが言ったあなたの経歴に、過去のことも付け加えないとね」
レイはさらりと返した。ハーマイオニーがほっと息をついた。

「ねえ……考えてみてね。いい?」
ハーマイオニーがハリーに向けて静かに言うと、ハリーは頷いた。
「じゃ、私は寝室にいくわ。レイ、行きましょう」
「ええ。おやすみなさい」
レイはハーマイオニーに続いて女子寮の階段を登った。
「……間違っていないと思う?」
前を行くハーマイオニーの背中から声が聞こえた。
「ええ。こう言ってはなんだけど」
レイはハーマイオニーの背中に優しく語りかけた。
「どきどきしてるの、わたし。この計画にね」
ハーマイオニーが振り返って笑った。
「私もよ」
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