HP and SB 3 ○騎士団編

□10 formation
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それからは会合の頻度を決めて、具体的な日時と時間は後に連絡することになった。会合の終わりには、ハーマイオニーが言いづらそうに羊皮紙を出しながら言った。
「私──私、考えたんだけど、ここに全員名前を書いてほしいの。誰が来たかわかるように。それと──」
「私たちのしていることを、言いふらさないように?」
言いづらそうなハーマイオニーの言葉を、今日殆ど口を開いていないレイが引き継いだ。

「そう──そう、全員が約束すべきだわ。名前を書けば、私たちの考えていることを、アンブリッジにも誰にも知らせないと約束したことになります」
「確かに、ここまでくれば一蓮托生。誰かが裏切れば全員が苦しむことになるものね」
レイはハーマイオニーを支持した。
フレッドが真っ先に羊皮紙に手を伸ばし、嬉々として名前を書いた。しかし何人かはリストに名前を連ねることにあまり乗り気ではないようだった。
「えっと……まあ、アーニーがいつ集まるかを僕に教えてくれるから」
ザカリアスはのろのろと言った。そのアーニーでさえも躊躇っていた。
「僕は──あの、僕たちは監督生だ。だからもし、このリストがばれたら──」
しかしここでは意外な人物が声をあげた。

「僕はこの試みのためなら、主席の座も、監督生の座も失っていいとさえ考えるよ」
「セド……」
ハッフルパフの監督生にして最高学年の主席、かつクィディッチチームのキャプテンであるセドリックは、同寮の後輩に向けて優しく言った。
「それに自分だけリスクを負わないのはフェアじゃない。はっきり言って、男として情けないんじゃないかい?」
セドリックの言葉に、名前を書くことを躊躇っていた生徒は顔を赤くした。
「大丈夫よ、アーニー。私がこのリストをその辺に置きっぱなしにするとでも思っているの?」
ハーマイオニーの言葉もうけて、アーニーは安心したように名前を書いた。ザカリアスも名前を書いた。

「あの──」
レイはチョウの友人を見て声をかけた。その友人はリストの話がでたときから、チョウのことを恨みがましい顔で見ていた。それに全体からすこし浮いている。
「もしやめたいのなら止めないわ。引き返すなら今だと思うの」
その女の子はキッとレイを見つから作り笑いを浮かべた、ような気がした。
「どうして私に聞くの?」
「──悩んでいるように見えたから。今はいいの。でも、リストに名前を書いたら悩まれては困るの。さっきも言った通り、一蓮托生だから」
レイはそれから全体を見回した。

「みんなバレることがやっぱり一番の危惧でしょう?わたしに考えがあるの」
「バレないためにできることはなんでもすべきだ!」
アーニーがすぐさま反応し、レイはほわりと微笑んだ。
「それって?」
ハーマイオニーも不思議そうに聞いた。
「忠誠の術を使うの。秘密の守人、もしくはこの会合のメンバーから直接聞く以外は、その他の人はその秘密を知り得ないという魔法。守人はメンバーと兼任できるし……つまりメンバーが外部にこのことを漏らさない限りは、秘密は守られる」

「すごいじゃないか!」
リーが興味深そうに声をあげた。
「でも忠誠の術って、かなり難易度の高い魔法よ?」
ハーマイオニーはレイに言った。
「大丈夫。前にシリウスに話を聞いたことがあるから」
「そっか、シリウス・ブラックの無罪を証明したのは君たちだったね!」
ジャスティンが言った。
「ならさ、忠誠の術と一緒に呪いもかけておこうぜ。誰かが裏切ったときにわかるように」
ロンが注意深くザカリアスを見ながら言った。
「まさにシリウスは、忠誠の術を破った人物がだれかわからなくて、あんな目にあったんだから……」
「「そりゃいいぜ」」
ロンの言葉にフレッドとジョージは頷き、ザカリアスは目をそらした。

「……いいわ。ともかくそういうわけだから、やめたい人は今名乗りを上げて。リストに名前を書いた人でも、今なら取り消せる。本当にいいのか、もう一度考えてみて」
レイは回りを見回した。
「もちろんさ」
「今年僕たちがやることの中では、これは一番大切なことさ!」
「なんだか楽しい!」
みんな好意的な表情をしていた。
改めてチョウの友人に目を戻すと、硬い表現でリストに名前を書いていた。本当によかったのか気になったが、これ以上きくのも野暮だと思い、レイは黙った。羊皮紙には、マリエッタ・エッジコムと書かれていた。
「全員書いた?」
ハーマイオニーが確認すると、みんなが頷いた。

「それならレイ、お願い」
レイはハーマイオニーに頷き、杖を構えた。それから全員の間を歩いて回り、杖先を軽く全員に触れてまわった。
「この場にいる者たち30人は、我々が今後行う会合について、他の人の知らないところとします──よろしいですか?」
全員が声に出してyesと答えた。光が30人を包んだ。
「うん、忠誠の術は成功。ハリーを守人にしたわ」
レイは真剣な表情を一変、ほわりと微笑んだ。
「忠誠の術をかけられるなんて……」
アンジェリーナが驚いたように目を開いた。
「これで絶対安心だな!」
ディーンが笑った。
「いやまて、呪いの方も忘れちゃいけない」
ロンが注意深くいうと、みんな笑った。誰も裏切らないだろうと殆ど確信しているのだ。

「いいわ──ハーマイオニー、一緒にかけましょう」
「ええ。それがいいわね」
レイとハーマイオニーは羊皮紙に杖を向けた。
「「ソプロン!」」
羊皮紙は少し光ってから、元通りになった。
「それってどんな呪い?」
コリンが興味深そうに聞いた。
「大したことない呪いよ。ねぇ?」
ハーマイオニーはレイに意味ありげに微笑んだ。
「さあ、なら次の会合がいつかは追って連絡します。じゃあまた」
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