HP and SB 3 ○騎士団編

□14 paralysis
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「……大丈夫ですよ、わたしは葉月の血が濃すぎるので……」

「……ならば私は身を引きましょう……」

翌朝、魔法薬で寝ていた三時間の間、暖かい夢を見ていた。目を覚ますと頬に涙が伝っていた。
足元にはたくさんのプレゼントが届いていた。そうか、今日はクリスマスだ。
みんなのクリスマスプレゼントを手配したのが過去を知る前でよかった。そうでなければ何もしなかっただろう。プレゼントを機械的にあけながら、レイはぼーっと考えた。

シリウスとリーマスからは『実践的防衛術と闇の魔術に対するその使用法』の全集だった。ハーマイオニーからは数占いの参考書、ロンは何故か香水、ハリーからも防衛術系の本だった。セブルスはマルフォイ夫妻と連名で、新しいコートとタイツ二足、ワンピースが贈られていた。つまりは新しい戦闘用だろう。デスイーターから贈られたにしてはやや面白い内容だった。その他にもドラコやセドリック、フレッドやジョージ、ジニー、モリーなどなど、たくさんのプレゼントがそこにはあった。



レイが下に降りようとしたところで、ハリー、ロン、ハーマイオニーと遭遇した。それからバチっと音がして、フレッドとジョージが現れる。
「暫くは下に行くなよ」
「どうして?」
ジョージの言葉にロンが質問した。
「ママがまた泣いてるんだ。パーシーがクリスマスセーターを送り返してきやがった」
「手紙もなしだ。パパの具合はどうかと聞きもしないし見舞いにも来ない」
「俺たち、慰めようと思って、それでパーシーなんかバカでっかいネズミの糞の山だって言ってやったさ」
「効き目なしさ。そこでリーマスと選手交代だ。リーマスに慰めてもらって、それから朝食に降りていく方がいいだろうな」
双子が代わる代わるいい、四人は頷いて部屋に戻った。レイはリーマスととにかく会いたくなかったので、都合がよかった。



昼にはみんなで聖マンゴに行くことになった。今回はシリウスが残るらしい。
マンダンガスが車を用意し、運転した。中に拡大呪文をかけてあったので、モリー、ビル、フレッド、ジョージ、ロン、ジニー、ハーマイオニー、ハリー、レイ、リーマス、ムーディの全員が座れた。
「やあ!メリークリスマス!おお、ハーマイオニーにレイも来てくれたのか、リーマスも」
アーサーは元気すぎる勢いで一行を迎えた。

「おじさま、今回は大変でしたね」
「いやいや、ハリーが見つけてくれたお陰だよ。君も護衛に駆り出させて、すまなかったね」
レイはにっこりと笑った。
「あなた、包帯を変えましたね。1日早く変えたのはなぜなの?」
モリーはアーサーの異変にいち早く気付き、アーサーはそれにドキッとした。
「あー、それが、オーガスタ・パイがちょっと思い付いてね──それが、補助医療なんだが──」
リーマスは黙って狼人間に噛まれたと記載されている男の人のところに歩いていった。
「僕はちょっとお茶を飲みにいってくるよ」
「「ついてく」」
不穏な空気を読み取ってビルがドアに向かうと、双子が嬉々としてついていった。
「僕もお茶が飲みたいな」
ハリーが言うと、ハーマイオニー、ロン、ジニーが立ち上がった。レイもあわせて立ち上がった。

「だいたいそんなことだって、どういうことですか!」
病室の扉が閉まる瞬間、モリーの叫び声があたりに響いた。
「さてと、わたしはちょっと外すわね」
レイは四人を見て言った。
「外すってどこに?」
ハリーとハーマイオニーは完全に顔をしかめている。ロンは素直に聞いた。
「……ちょっと胃薬を貰ってくるわ。食べ物を受け付けないのは胃の不調みたいだから」
レイがほわりと笑ってそう言えば、一瞬でハリーとハーマイオニーの眉間のシワが取れた。
「そうね……それは確かに必要ね」
「うん、行っておいでよ」
「そういうわけだから、ハリー、頼むからわたしのいない間に病院の外に出たりしないでね。大きな責任問題になっちゃうわ」
レイがそう押すと、ハリーは笑って頷いた。
「約束するよ」



ハリーたちと別れて、内科の辺りを経由してから、念のため病院のなかをぐるぐる回った。その後外に出る。
もう大丈夫だろう、と人気のない裏通りをいこうとしたところで、レイは立ち止まった。と、真後ろで別の足音もとまる。
「なんでついてきているの」
「それは勿論、君が何かしようとしているからだよ」
振り返ると目が笑っていないリーマスがいた。
「勝手に病院を離れて、どういうつもりだい?」
「ただの散歩よ。息抜き。わたしはグリモールドプレイス12番地では散歩も許されないみたいだから」
レイは淡々と答えた。
「適当な作り話が聞きたい訳じゃないんだが」
「なら言うわ。おじさまが予想外の早さで見つかってここに運び込まれた予想外の状況。手出しはできなくても近くに彼らが潜んでるんじゃないかと思って、偵察にきただけ」
レイは感情を浮かべない人形の顔で言った。
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