HP and SB 3 ○騎士団編

□15 lost memory
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「記憶がある……?」
シリウスは狼狽した。
「そんなことって……ありえないだろ」
ジョージが呟いた。
「──あり得ない。あり得ないレイ……君は私やシリウスや、セブルスやマクゴナガル先生から聞いた話を自分の記憶と勘違いしてるんだ──」
リーマスが言った。


「──ミネルバとあの人の話をしたのはO.W.Lについてだけ。セブルスと話したのは、記憶の答え合わせだけよ──」
レイは声を震わせながら言った。
「なら私かシリウスから聞いたんだ。夏は特に一緒に行動することが多かったから……」
リーマスは信じたくない様子だった。
レイはキッとリーマスを睨むと、次の瞬間にはポケットから杖を取り出して、リーマスに向けていた。

「…………!?」
「レイ、やめなさい!お父様に杖を向けるなんて……!」
モリーの声が響いた。
「……わたしは他の誰も知らないはずのことを知ってるわ……」
「レイ、やめろ」
シリウスも声を低くした。レイはシリウスにも杖を向けた。そのまま後ずさる。
「あの人がかけた忘却術を解いてあげる……わ、わたしなら……」
レイは杖を強く振った。青い光が溢れる。リーマスと、シリウスに向けて。
誰もが息を飲んだ次の瞬間、リーマスはその場に膝をついた。


「僕はリーマス・ルーピン。新入生。君は?」

「ミオ・バーユェです」

「ミオか。よろしく」

「やぁ、隣にいたのかよ」

「なあ、奥のあんたたちはどこの寮がいい?こいつ、スリザリンがいいって言うんだ。僕らは絶対ごめんだね」

「僕は、特には」

「ふーん、あんたは?」

「ハッフルパフがいいですけど」


リーマスとシリウスはどこか宙を見ていた。
「シリウス……?」
ハリーが不安そうに聞いた。レイは杖をだらりと下げていた。
「そんな……何で忘れていたんだ……」
リーマスは呟いた。
「そうだった……ホグワーツ特急のコンパートメントで、私とジェームズの隣にリーマスとミオがいて……なのに、すっかり忘れていた……四年生で初めて喋ったと……」
シリウスもぼそぼそと言った。


「シリウス、何がどうしたの?」
ハリーが焦れったそうに聞いた。
「……私たちは四年生でミオと出会ったと思っていた──だがもっと早く、入学前のホグワーツ特急で一緒だったんだ──。そこでリーマスと出会ったことは覚えていたが、その隣にミオがいたなんて……なんで忘れてたんだ?」
シリウスはレイを見た。

「あの人のかけた忘却術は……わたしには破れなかった──」
レイは泣きながら地面を見ていた。
「レイ……何故だ?あいつが私たちに忘却術をかけたのか?」
シリウスは聞いた。
「そうよ……その課程は……やっぱりわたしは劣化コピー……あの人のかけた忘却術も、破ることができない……何をやってもあの人には敵わない……いつだってそう──」
レイはその場に崩れ落ち、途切れ途切れに呟いた。


「劣化コピーだなんて……そんなこと……」
ハーマイオニーが泣きながら言った。
「私は……君とミオ、両方を知っているけれど……ひとつだけ、間違えなく君がミオに勝っているものがある……」
膝をついていたリーマスが立ち上がりながら言った。
「……そんなものないわ」
「いいや、間違いない。君は、ミオより圧倒的に──閉心術で優る──」
「閉……心術?」
ハリーが呟いた。


「だからいつも君がわからない──君の心を開くことができたらといつも思っていた──そして今も。一度でも私は君の閉心術を破れたことがない」
リーマスは続けた。
「だからわかってやれないっていうのかい──?」
レイは黙っていた。それから部屋の扉に向けて叫んだ。

「アクシオ、憂いの篩!」
すぐにシリウスの父の部屋から薄い盆のようなものが飛んでくる。レイはそれに自分の頭から記憶を出して入れた。
「わたしのことはわからなくていい。あの人のことはわからせてあげるわ」
レイは篩を杖で叩いた。ミニチュアの動きを見るように、水面で煙が動き出した。
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