HP and SB 3 ○騎士団編

□17 prison break
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「え?それじゃあリータ・スキータと会っていたの?」
夕食の時に話を聞いて、レイは目を丸くした。
「ならわたしも呼んでくれたら良かったのに。わたしも目撃者じゃない」
レイが困ったように言うと、ハーマイオニーはぴしゃりと返した。
「私たちは、今あなたにストレスを与えたくないのよ。それに今のあなたを見たら、リータはあなたが"世間のバッシングに憔悴して……"とか書くわよ。あともうひとつ言えば、記事が掲載されてデスイーターが告発される時に、それを告発したのがあなただってルシウス・マルフォイに知られたくはないでしょう?」

「君の話がおおっぴらになったら、アンブリッジがどう思うか、楽しみだ」
レイが返す前に、ディーンが感服したように言った。
「いいことをしたね、ハリー。きっと……辛かっただろう?」
ネビルもハリーを賞賛した。 レイは居心地が悪く、小さくため息をついた。
「あ、聞くのを忘れてたわ」
ハーマイオニーが朗らかにハリーに聞いた。
「チョウとのデートはどうだったの?どうしてあんなに早く来られたの?」
ハリーはルバーブクランブルを引き寄せながら言った。
「めちゃくちゃさ。聞かれたからいうけれど」
それからハリーはマダムパディフットの店で、チョウが話したこと──ロジャーにデートに誘われたこと、セドリックとここに来たこと、チョウが泣き出したこと──を言った。

「……というわけで、チョウは急に立ち上がって、そう、こう言うんだ。ハリー、じゃ、さよなら!それで走って出ていったのさ」
ハーマイオニーはチョウの後ろ姿をちらりと見て、ため息をついた。
「ハリーったら。言いたくはないけど、あなた、ちょっと無神経だったわ」
「僕が?無神経?」
ハリーは憤慨した。
「あのねぇ、デートの途中で私に会いたいなんて言うべきじゃなかったのよ」
「だって、だって──だって、12時に来いって君がそう言ったんだ」
ハリーは咳き込みながら言った。
「言い方がまずかったのよ。こう言うべきだったわ──本当に困るんだけど、ハーマイオニーに三本の箒に来るように約束させられた。本当は行きたくない。できることなら一日中チョウと一緒にいたい。だけど、残念ながらあいつに会わないといけないと思う。どうぞ、お願いだから、僕と一緒に来てくれ。そうすれば、僕はもっと早くその場を離れることができるかもしれない。──それに、私のことを、とってもブスだ、とか言ったらよかったかもしれないわね」
最後の言葉を、ハーマイオニーはふと思い付いたように付け加えた。レイは吹き出した。

「だけど、僕、君がブスだなんて思ってないよ」
ハリーは不思議そうな顔をした。ハーマイオニーも笑った。
「ハリー、あなたったらロンよりひどいわね……おっと、そうでもないか」
ロンとジニーが泥だらけで不機嫌な顔をぶら下げて、大広間にどかどかと入ってきたところだった。
「レイ、君はマルフォイとデートするときにどこにいってどんな話をするんだ?」
ハリーが困ったように言った。
「デート?うーん……大抵はお店をみてまわって、サロンでお茶をするわ。話は勉強のことや、ペットのことや、先生たちのこととか──」
「ほら、普通じゃないか!なんでチョウはわかりづらいんだ?」
ハリーはハーマイオニーに向き直った。
「それはレイが鈍いんであって、これをスタンダードと思わないことよ」
ハーマイオニーは呆れていった。



夕食の後、ロンとジニーはシャワーを浴びにいった。ハリーが天文学の新しい星座図と30分ほど格闘したこと、フレッドとジョージが現れた。
「ロンとジニーはいないな?」
椅子を引き寄せ、回りを見渡しながらフレッドが聞いた。ハリーは首を振った。
「ならいいんだ。俺たち、あいつらの練習ぶりを見てたけど、ありゃ死刑もんだ。俺たちがいなけりゃあいつら全くのクズだ」
「おいおい、ジニーはそうひどくないぜ」
ジョージがフレッドの隣に座りながら訂正した。
「実際あいつ、どうやってあんなにうまくなったのかわかんねぇよ。俺たちと一緒にプレイさせてやったことなんかないぜ」
「ジニーはね、六歳の時から庭の箒置き場に忍び込んで、あなたたちの目を盗んで、ふたりの箒に代わりばんこに乗っていたのよ」
ハーマイオニーが山とつまれた古代ルーン文字学の本の影から声を出した。
「へぇ──なーるへそ。それで納得」
ジョージが感心したような顔をした。

「ロンはまだ一度もゴールを守っていないの?」
『魔法象形文字と記号文字』の本の上からこっちをのぞきながらレイが聞いた。
「まあね、誰も自分を見ていないと思うと、ロンのやつ、ブロックできるんだけど。だから俺たちが何をすべきかと言えば、土曜日の試合であいつの方にクアッフルがいくたびに、観衆に向かって、そっぽ向いて勝手にしゃべってくれって頼むことだな」
フレッドがやれやれという顔をしていった。それからフレッドは真顔になり、窓際まで行って暗い校庭を見つめた。

「あのさ、俺たちクィディッチがあるばっかりに学校に留まったんだ。もうひとつ理由があったけど、それももうおしまいだし──」
ハーマイオニーが厳しい目でフレッドを見た。
「もうすぐ試験があるじゃない!」
「前にも言ったけど、N.E.W.Tなんて俺たちはどうでもいいんだ」
フレッドが言った。
「例のスナックボックスはいつでも売り出せる。あの吹き出物をやっつけるやり方も見つけた。マートラップのエキス数滴で片付く。リーが教えてくれた」
吹き出物?と首をかしげるレイを残して、ジョージが大あくびしながら曇った夜空を憂鬱そうに眺めた。
「今度の試合は見たくもない気分だ。ザカリアス・スミスに破れるようなことがあったら俺は死にたいよ」
「むしろあいつを殺すね」
フレッドがきっぱり言った。

結果、その試合はグリフィンドールからすると最悪だった。しかしグリフィンドール生はたった22分の屈辱に耐えるだけでよかった。ロンは14回ゴールをやぶられたので、すっかり意気消沈していたが、今回も退部は許されなかった。
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