HP and SB 3 ○騎士団編

□17 prison break
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その翌日。
大広間に入ったレイは、今日も周りを見渡してため息をついた。
そこかしこで広げられている日刊予言者新聞。アズカバン集団脱獄以来、多くの学生が新聞をとるようになった。
至るところでにやりと笑う両親の顔が見られ、レイはうんざりしている。自分の両親がマルシベール夫妻だとバレないかにひやひやし、かつその両親が今にも自分を殺しに来るのではないか、自分と関わった人々を殺してまわっているのではないかと心労が絶えない。

「……大丈夫かしら」
ふと騎士団の任務でどこにいるのかわからないリーマスとシリウスを思った。危険の最前線にいるのは彼らだ。最後に会った時には本部を飛び出したときだったが、彼らはどんな顔をしていただろう。
ぼんやり席につくと、ハリーが少し面倒くさそうに目の前のふくろうに聞いていた。
「誰を探してるんだい?」
しかしそれはハリー宛のものだった。しかもバタバタと何羽ものふくろうがハリーの前に止まる。
「ハリー!」
ハーマイオニーが羽毛の群れのなかに手を突っ込み、長い円筒状の包みを持ったコノハミミズクを引っ張りだし、息を弾ませた。
「私、何だかわかったわ!これから開けて!」
ハリーが茶色い包みを破ると、中からきっちり巻かれた『ザ・クィブラー』が現れた。


ハリー・ポッターついに語る
「名前を呼んではいけないあの人の真相」──僕たちがその人の復活を見た夜


「いいでしょう?」
いつの間にかあらわれたルーナが言った。
「昨日出たんだよ。パパに無料で一部あんたに送るように頼んだんだもン。きっとこれ、読書からの手紙だよ」
その場にいたハリー、ロン、ハーマイオニー、フレッドがすぐさま開封作業に取りかかった。レイもおそるおそるひとつ手に取る。そこには、聖マンゴにいけ!とだけ書かれていた。

「ねぇ!僕たちのこと、信じるって!」
ハリーはレイを見ながらきらきらした笑顔で言った。
「こいつはどっちつかずだ。君が狂ってるとは思わないが、例のあの人が戻ってきたとは信じたくない。だから今はどう考えていいのかわからない。なんともはや、羊皮紙の無駄遣いだな」
レイは開封の手を止めて雑誌本体に手を伸ばした。
そこにはハリーが当時のことを事細かに語った内容が掲載されていた。もちろんレイの名もある。ただしレイが無効化魔法を用いようと試みたことは割愛されているし、デスイーターを纏めて倒した術──本当はトラウマからくる魔力の暴走──も、うやむやに書かれていた。それ以外は実に子細で、その場で名前を呼ばれていたデスイーターたちは、その名を明らかにされている。もちろんルシウスも例外ではない。


「何事なの?」
少女っぽい、甘ったるい作り声がした。
「どうしてこんなに沢山手紙が来たのですか?ミスターポッター」
「今度はこれが罪になるのか?手紙をもらうことが?」
フレッドが食いついた。
「気を付けないと、ミスターウィーズリー、罰則処分にしますよ。さあ、ミスターポッター?」
ハリーは一瞬悩んだ顔をして、それから言った。
「僕がインタビューを受けたので、みんなが手紙をくれたんです。六月に僕の身に起こったことについてのインタビューです」
アンブリッジの声がことさら甲高くなった。
「インタビュー?どういうことですか?」
「つまり記者が僕に質問して、僕がそれに答えました」
ハリーがレイの方を向いたので、レイは手に持つ雑誌を差し出した。

アンブリッジは顔面蒼白で、受け取った雑誌の表紙を見た。
「よくも……こんな……」
それからきっとして言い去った。
「ミスターポッター、あなたはもうホグズミード行きはないと思いなさい」
それから振り向いて言った。
「あなたには嘘はつかないようにと何度も何度も教え込もうとしました。どうやらまだ浸透していないようですね。グリフィンドール50点減点。それから1週間の罰則。あなたもですよ、ミスルーピン」
レイは無言できょとんとした。

「レイは関わっていません!」
ハリーが即座に言い返す。
「嘘はつかないように。わかっています、首謀者が誰かくらい!」
アンブリッジは金切り声をあげた。
「首謀者は私です!」
ハーマイオニーは大きな声で言い返した。
「おだまりミスグレンジャー!」
レイは先ほど読んだ記事の内容を思い出した。それからふっと、わざとらしく悲しそうな顔を作って言った。
「アンブリッジ先生はわたしのことがお嫌いな様ですね」
アンブリッジはレイを睨むと肩をいからせて歩いていった。

「レイ、ごめんなさい。こんなはずじゃ……」
レイの悲しそうな顔に動揺したハーマイオニーが言った。レイはけろっとした顔で笑う。
「今のも含めて、いいPRになるんじゃない?」
するとハーマイオニーはレイの意図と作り顔に気がついたらしい。
「ああ、そういうこと」
「どういうこと?」
ハリーが訝しげに聞くので、レイは雑誌を渡した。ハリーの横からロンがそれを読み上げる。
「……の問いに、ハリーはこう答えた。"レイは現在も魔法省の行為の一部により、辛辣な攻撃を受けています。そのため今日は僕ひとりでお答えします"……そっか、もしこれを読んだ生徒がいたら──」
「きっと沢山そんな生徒はいることでしょうね」
ハーマイオニーはにんまりしながらいった。
「それにしても、ハリーなんだか気を使わせてごめんなさい」
レイは謝った。
「いや、これは間違ってないよ──アンブリッジは君のことを特に毛嫌いしてる。今の行動が物語っていただろう?」
レイはハリーの言葉に苦笑した。
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