HP and SB 3 ○騎士団編

□18 his case
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「最近は食が細い様だな。図太い性格している癖して」
「失礼ですねぇ。第一私はもともとそんなに食べませんよ。少なくともここでは」
皿にこんもりグリーンサラダを盛ったミオは、面倒臭そうな顔で黙々とそれだけを食べていた。
「倒れても知らんぞ。僕はその時は置いていくからな」
セブルスはそんなミオをテーブルの向かいから見ながら言った。

「そんなこと言って、本当は介抱してくださるんでしょう?まあ、鶏肉ぐらい食べましょうか」
ミオは目の前のガラスボウルに入った、裂かれた茹でチキンをいくつかサラダに乗せた。
「お二人は本物に仲がいいんですね。付き合ってるんですか?」
と、ここで新たな声。発生源はセブルスの隣だ。

「断固としてない」
「別にそう解釈頂いても結構ですよ」
バシッ。手近にあった新聞で、セブルスはミオの頭を叩いた。
「まるで夫婦漫才の様な……」
「何日かそうやってセブにくっついていれば、すぐにわかりますよ」
ミオが欠伸しながら言えば、少年、レギュラス・ブラックは少し目を輝かせた。
「いいんですか?」
「どうぞどうぞ。お手洗いからシャワールームまでお付き合いくださいな」
バシッ。二度目の新聞。

「……そういえば、ボイルチキンなんて普段ありますか?初めて見ましたけれど」
レギュラスの問いにはセブルスが答えた。
「この馬鹿者が、油が多いだ味付けが合わないだ文句を言うものだから、屋敷しもべ妖精が気を利かせてこのテーブルに常備してくれている」
ミオはグリフィンドールのテーブルを見やった。
「チキン!」
今まさにやって来た悪戯仕掛人。席につきながらシリウスはフライドチキンを取り叫んだ。四人をじーっと見ていると、ライトブラウンの髪が揺れた。振り返って視線のもとをきょろきょろ探す彼の視線を避けて、ミオは唸った。

「よくもまあ揚げた鶏肉を毎日何個も食べれる人間がいるものです。揚げた芋を毎日食べることでさえ、どうやったって信じられないのに」
「ちょっとバーユェさん、フライドチキンとフライドポテトって言ってくださいよ」
レギュラスはげんなりした顔で言った。原因は行儀悪くチキンと叫ぶ兄なのか、目の前で食べ物を美味しくなさそうに説明する先輩なのか。

「私のことはファストネームで読んでください。セブのこともそちらの方がよいでしょう」
「ならお言葉に甘えさせて頂きます。女性に馴れ馴れしいのは好みませんが、Bayueの発音が綺麗にできないので、それはそれで失礼ですから」
レギュラスは丁寧すぎるなかに、すこしの高慢さをのぞかせて言った。その口調はミオそっくりであるが、ミオほどは毒がない。

「それにしても個人の意見をしっかり取り入れるとは、ホグワーツの屋敷しもべ妖精もよく働きますね」
「普通にしておれば意見など伝わらん。こいつがちょくちょく厨房に行ってはなんやかんやとせびるからこうなった」
レギュラスはにっこり笑って言った。
「僕の家の屋敷しもべ妖精もよく働くんですよ。いつも良くしてもらっていたので、入学してから会えてないのが寂しいくらいです」
「……ああ、ブラック家ともなれば家に屋敷しもべ妖精がいるだろうな」
セブルスは一拍遅れてから言った。
「クリーチャー、でしたっけ?確かに彼は優秀な方でしたね」
ミオの方はのんびりと紅茶を啜ってから言った。

「ミオさんは──クリーチャーを知ってるんですか?」
レギュラスの方は大きく目をぱちくりとした。ミオの方はゆったりとカップを置いてから答える。
「ええ。この夏期休暇、私はあなたの家の別邸をお借りしていましたから」
「今晩は、ミオ、セブルス、レジー」
「おやおや、もうレギュラスはセブルスになついているのかい?」
そこに現れたのは優雅な雰囲気を漂わせるお二方。
「今晩は、シシー、ルシウス」
「お姉さま!ルシウスさん!」
現れたナルシッサとルシウスはにっこりと笑った。

「ナルシッサとレギュラスの間柄はどうなっているんだ?同じ姓だし親戚だろう?」
セブルスが聞くと、ナルシッサが答えた。
「従兄弟なの。シリウスの方はあれだから……レジーとは同じ寮になれてよかったわ」
「僕も光栄です」
レギュラスはにっこりと笑う。
去っていったふたりを見送ってから、レギュラスはゆっくり口を開いた。

「ミオさん、あなたは純血なんですか?」
ミオは基本的に冷ややかな目をサラダからちらりとあげた。
「ええ。それがどうかしましたか?」
一方のレギュラスも探るように言う。
「潔癖の純血主義の両親が別邸を貸したことに驚いたんです。ルシウスさんも純血主義ですし。少なくとも僕の両親は、聖28一族しか純血とは認めないですから」
ミオはゆったりと口に弧を浮かべた。
「両親が台湾にいますからね、どう頑張っても聖28一族に入れないでしょう」
「なぜイギリスの学校に?」
ミオは更に笑みを深めた。

「秘密は女性を美しくさせるんですよ」
レギュラスはそのミオの表情に息を飲む。
「──失礼しました」
「いいえ」
ミオはグリフィンドールのテーブルから四人が立ち上がるのを遠目に見ていた。
「それではセブ、レジー、ご機嫌よう」
「……唐突に馴れ馴れしくなりましたね」
ミオはさっと立ち上がると、四人の後を追った。愛称で呼ばれたレギュラスはぽつりと呟いた。
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