くろねこ

□貴方
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私の自慢といえば、空色の目とダンディーな日本人の父親と美人なイギリス人の母親がいること

あとは人より少し裕福な家庭に生まれたこととか

田舎町だけど

そんな私が幸せを感じなくなったのは2年前に母さんが病気で死んだとき

それから路頭に迷っている今だ




くろねこ




夏が過ぎて残暑も終わり、段々と冬が近付いてくる10月中旬

そんな時季に私は路頭に迷っていた

今の私には帰る家がなければ帰りを待つ家族もいない

あるのは莫大な借金

それなり裕福な家庭(仮)の我が家・浜中家は気が付いたら没落した上辺だけの金持ちになっていた

母さんが死んでから今までの2年のお金は所謂闇金からきた金だった

そんなところで借金作った(旧)ダンディーな父さんは逃げた

私を置いて

もちろん、借金は私の身に降り懸かる

信じられない現実

むしろ信じたくない現実

とりあえず、実家から逃げて新宿は歌舞伎町に来てみた

来たけれども宛もなく歩くのは惨めだ


「まずは仕事探さなくちゃ」


どうせ借金を返すなら不当な商売でも良い

でも風俗嬢は嫌だなぁ…

やっぱりキャバ嬢とかの方が安全に稼げるかな…


「おい」


いやダメだ

私可愛くないもん

安全かどうかもわからないし


「おいって言ってんだろうが!」

「Σうひゃあ!」


突然肩を掴まれて怒声を浴びせられたと思ったら、体の向きを半回転させられた

目の前には肩を掴んだ角刈り眼鏡と顎に髭を貯えたお兄さん

っていうかヤーさんですよねスーツとかその下に着てるシャツを見る辺り

あれ?私の人生ここでジ・エンド?


「浜中夢子だな?」

「チガイマース」

「てめッ、とぼけちゃってんじゃねぇよ」

「まぁ、落ち着け外道」


角刈りのお兄さんを制止した髭のお兄さんは口から紫煙を吐き出した

それから煙草を口にくわえて懐に手を入れ、一枚の紙を取り出す


「お前の親父がお前を担保に入れている。まぁ、逃げ場はねぇってことだな」


それから髭のお兄さんはまた口からフゥと紫煙を吐き出した

え、私これ死亡フラグ…?




△▼△▼△▼




「入れ」

「え、でもここって…」

は い れ

「……はい」


髭のお兄さんに思いっきり背中を押された

目の前階段なんですけど…!!


「ほっ!」

「運動神経良いじゃねぇか」

「まるでネコだな」


足を滑らした私はなんとか着地してみせた

昔色んなスポーツとか武術に手ぇ出しといて良かった…


「って言うかここ…」

「ホストクラブだよ」

「私お金ない…」

「誰が遊んで良いって言ったよ」

「とにかく中に入れ。詳しい話はオーナーがする」

「オーナー……」


ホストクラブのオーナーでこの人たちの上司ってことをイコールで結ぶと


「ヤーさん……」

「だから逃げるなっての」

「残念ながら、オーナーも俺達もそっち側の人間じゃないぞ」

「……うっそだぁ」

「なんだとコラ」

「まぁ、お互い強面なのは認めよう」

「認めちゃうのかよ」

「話が進まん。いいから中に入るぞ」

「いだッ!」


また背中を押されて、なんとか転ばずに中に入れたけど、異様な雰囲気なのは察知した

うわぁ、美形ばっかり…


「やっと来たか。遅いで、2人とも」

「やっぱり若旦那と外道お兄さんを向かわせたのがダメだったね」

「店の中では指折りの強面だからな」

「……………」

「あら、鬼くんが言えることじゃなくてよ?それから、カズヤくんは無言で鬼くんを見るのやめなさい」


白髪色黒関西人の男の人を皮切りに、中にいた人達はざわざわと騒がしくなった


「濃い、なぁ…」

「素直か」

「いたい!」


角刈りのお兄さんにチョップ喰らった

いたい…


「ま、突然のことやさかいしゃあないわ」


そう言う関西のお兄さんは穏やかな笑みを浮かべていた


「せやなぁ…、そんな君に今言うんならこれやろ」




「「ようこそ、beatifyへ」」




お父様、どうやら貴方は私をとんでもない所に放り出したようですね…







Next Night...
 

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