読み切り
□才谷「いつも」
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写真というものを初めて見た。
「これ、梅さん?」
それをくれたばかりの目の前の人をみやると、嬉しそうに微笑んでいる。
「これがあれば、わしがいのうても寂しくないろーう?」
彼がそんなことをいうなんて珍しい。
「いなくてもって、いなくなるような予定でもあるんですか?」
「いんにゃ、ないがで」
変な人だ。
初めて会ったときも思ったけど、やっぱり変な人だ。
よほど私は情けない顔をしていたに違いない。
彼は慰めるように私の肩を叩いた。
「わしはいつでもおまん一筋ながら、おまんにもわしのことを四六時中考えていて欲しいがやきす」
これはそのためのものだと。
妙なことを考える人だ。
私は今でもいつだって、梅さんが消えてしまいそうで心配で仕方ないというのに。
きゅっと彼の手を握る。
「わかりました」
彼は吃驚した顔をしたあとで、いつものようにぎゅっと私を抱きしめた。