幕末恋風記[番外]

□小娘と良順と父と。
1ページ/2ページ

 垣根を突っ切り、まっすぐに診療所へ飛び込んでいったら、そこの診療所の先生にとっつかまった。

「良ちゃんー、また怪我したー」
「おい、もうちょっとこいつをちゃんと育てろ」
「育ってるだろ、健康に」

 ジタバタしていると、父の膝の上に勢い付けて落とされる。

「しっかりガキ押さえとけ」

 抱きしめられる父の腕の中で、良ちゃんに体中の擦り傷切り傷に沁みる薬をつけられる。

「うぅ…」
「唸るなら、垣根を突っ切るな。
 バカ」
「バカバカ言うな、良ちゃん」
「良ちゃんいうな、バカ」

 楽しそうに笑う父様の声。

「はははっ、二人は仲良いなぁ」
「うんっ、良ちゃん大好きだもっ」
「でも良順にはこいつはやれねぇぞ。
 俺の大事な大事な娘だからなー」
「アタシも父様だぁいすきっ」

 頬ずりしあう父娘に、良順は諦めたため息を吐くのだった。



(2006/05/31)
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ