幕末恋風記[番外]
□小娘と良順と父と。
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垣根を突っ切り、まっすぐに診療所へ飛び込んでいったら、そこの診療所の先生にとっつかまった。
「良ちゃんー、また怪我したー」
「おい、もうちょっとこいつをちゃんと育てろ」
「育ってるだろ、健康に」
ジタバタしていると、父の膝の上に勢い付けて落とされる。
「しっかりガキ押さえとけ」
抱きしめられる父の腕の中で、良ちゃんに体中の擦り傷切り傷に沁みる薬をつけられる。
「うぅ…」
「唸るなら、垣根を突っ切るな。
バカ」
「バカバカ言うな、良ちゃん」
「良ちゃんいうな、バカ」
楽しそうに笑う父様の声。
「はははっ、二人は仲良いなぁ」
「うんっ、良ちゃん大好きだもっ」
「でも良順にはこいつはやれねぇぞ。
俺の大事な大事な娘だからなー」
「アタシも父様だぁいすきっ」
頬ずりしあう父娘に、良順は諦めたため息を吐くのだった。
(2006/05/31)