幕末恋風記[番外]
□江戸からの手紙。
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「先生ーっ、山南先生ー!」
縁側から自分を呼ぶ声に呼ばれて、顔を上げた。
そこにいるのは教え子の一人、小六である。
「どうしたんだい、小六」
走ってきたのだろう、息の上がっている少年を宥めながら問う。
彼は早口に捲したてた後で、それを手渡してくれた。
江戸からの彼女の手紙だ。
時候の挨拶に始まり、江戸の世情などをしたためて、最近の新選組の動向を教えてくれる。
彼女の手紙はいつも読んでいるだけで声が聞こえてくるような気がする。
目の前でいつも笑っていた姿も、腕の中で恥ずかしそうに微笑んでいた姿も、私の発明品を嬉しそうに弄る姿も、どれも鮮明に覚えているからなのか。
ふとそれに気がつく。
手紙の一部が波打っている。
いつもどおりに明るく締めくくられているけれど、裏返してみるとよくわかる。
「……涙?」
強がりな君の隠した弱さ。
だけど、私が助けになど行こうものならば、君はきっとはねのけるから。
「小六、山崎君を呼んできてもらえるかい?」
私は私の方法で、君を助けるよ。
それだけでも許してはもらえないかい?