読み切り
□近藤(御礼夢)
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甘い欠片を空に放り投げ、キラキラと陽光を反射させながら落ちてくる其れに食らいつく。
「美味しい〜っ」
袋いっぱいの金平糖の提供者は、近藤さんや山崎さんや島田さんだ。
甘いもの好きの私に彼らはいろいろなお菓子をくれる。
お返しできることと言えば、お茶を淹れることぐらい。
それでもいいと言ってくれるので、いつも通りお茶を淹れた後、誰もいない縁側に座って、行儀悪く投げ食いしているのである。
永倉さんあたりがいたら、きっと「ガキ」等と馬鹿にするのだろうけれど、昨日がお給金の日だったので島原から帰ってくるワケもない。
もう一度放り投げ、落ちてきたそれに食らいつく。
「美味しい〜っ」
幸せをかみしめていると、クスクスと笑う声が聞こえた。
「器用だねぇ」
楽しそうな声に満面の笑顔で応える。
「昔から得意なんですよ」
自慢げな様子にクスクスと忍び笑いを漏らしつつ、隣にしゃがみ込む。
そして、大きな手を差し出した。
「俺がやってみてもいい?」
なんだろう?まあ、近藤さんなら変なコトはしないだろうし。
「いいですよ」
快く渡してから、私は自分の甘さを知ることとなる。
*
−数分後−
私の周りにはキラキラとした欠片が散らばっている。
「あ〜ぁ」
すまなそうな近藤さんの姿に、怒る気も失せてしまった。
キラキラの中に寝転がる。
右を向いても、左を向いてもキラキラ。
「ふふふ」
「あの〜……?」
幸せだなぁ。
近藤さんがいて、甘くてキラキラしたお菓子があって、平和な今が何よりも。
「幸せ〜っ」
「へ?」
呆けた表情の近藤さんに説明してみる。
「だからですね。
近藤さんがいて、金平糖があって、キラキラしてて、平和だなぁって」
だから、幸せ。
そういうことかぁ、と呟いた近藤さんは私のそばに膝をついて、優しい声で囁いた。
「だったら、俺も幸せだなぁ」
目だけで何故と問う。
「君を独り占めできるからさ」