読み切り
□原田「待ち時間」
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待っている時間は嫌い。
独りでいる時間は嫌い。
独りにする人は、嫌い。
「悪かったって」
目の前で両手を合わせて私を拝み倒す男を横目で睨みつける。
かの有名な新選組の組長で。
強面の上に、首にはじゃらじゃらと鎖をつけて、見るからに恐ろしげな人なのに。
「別に怒ってないです」
「うそつけ」
私の前ではこんなにも情けないこの人が大好きです。
「左之助さん」
「マジで悪かった。
反省してる。
このとーり!」
「だから、本当に怒っていませんって」
いぶかしげな彼にくるりと背を向けて、笑いを含ませながら続ける。
「独りは嫌だけど、左之助さんを待っている時間は大好き」
左之助さんがどんな顔で来てくれるのか、考えている時間は大好き。
「だから、もっと遅く来ても大丈夫ですよ?」
微笑むながら言う私の頭を抱き込んで、
「馬鹿言え」
左之助さんは優しく、照れくさそうに、少し不満そうに呟いた。