読み切り
□原田「天の数歌」
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ひとふたみよ
いつむよなな
やここのたり
ふるべゆらゆら
ふるべゆらゆらと
ふるべ
「なんだそれ?」
壬生寺の境内で俺を膝枕する彼女が詠う文句は耳に心地良く。
体の中までさやさやと浸透していくよう。
「元気の出るおまじない、かな」
夕陽を受け、柔らかく微笑む彼女の柔らかな膝に体を預け、両の目を閉じる。
「元気な左之助さんが大好きなの。
だから、早く元気出してね」
言わなくても気が付いてくれたことが何より嬉しい。
なぁ俺はそんなお前が。
*
再び彼女が詠いだす。
子守歌のように、優しく柔らかく包み込んでゆく。
ひとふたみよ
いつむよなな
やここのたり
ももちよろず