幕末恋風記[追加分]

□文久三年長月 02章 - 02.7.1#山南先生
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 ここ数日、私はずっと同じ夢を見ている。楽しかった頃の想い出を、何度も何度も繰り返し、最後には私が何もかもを斬り殺してしまう夢を、ずっと見続けている。「今」もいつか想い出に変わってしまうのだろうか。

(夢だったら、よかったのに)
 夢の中で私は何も知らずに待ち続けている。決して還ってこない人を私は待ち続けている。夢だから逢えるなんて想ってないのに、私は待ち続けている。逢いたいと願う自分と逢いたくないと踞る自分が、私の中で争っている。

 どれだけの夜を過ごしたら、一人が平気になるのかと考えたこともあったけど、どれだけの時間が過ぎても私は大切な人を失うどんな状況にも耐えられないままだ。だから、心の中に私は倉を描く。その向こうへ哀しむ自分を追いやって、私は私に鍵をかけてしまおう。

 私の心が、壊れてしまわぬうちに。心が砕けて、欠片となる前に。

 次に目を覚ませば、それが私の現実。いつもと変わらない私の日常が、また、始まる。





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