(マ)シリーズ

□一緒に……
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怖い夢で目覚めた朝、外の景色は一面銀世界に変わっていた。

そんな光景を目の当たりにした俺は、否がる婚約者を無理矢理散歩に連れ出したのだが……。





§一緒に……§






「何をやってるんだ、へなちょこ!」
「ま、待てよ。雪に足とられて抜けな……いぃっ!?ぐはっ!」


おれはバランスを崩し、顔面からナイスダイブを最愛の人に披露した。


「……まったく、何をしてるんだ。ほら、立てるか?」


ため息もそこそこに、ヴォルフが手を差し出してくれた。
俺はその手を取ると、肩を落としながら嘆く。


「わりぃ、格好悪いな俺」
「気にするな、今に始まったことじゃない」
「ゔっ」


本当のことでもさ、愛しい人に肯定されるのってすっげぇヘコむんですけど……。


「ちぇ〜、ひっでぇの。もっと優しく言えないのかよ」
「何を言っている。優しくなどしたら調子にのるだろうユーリは」
「調子にのる?俺が?いつどこで俺が調子にのったよ?」


なんかおれ、ガキみたい。

「ユーリ……」


何焦ってんだろ?
一人でバカみたいだ。


「―――ごめん。おれ、ヴォルフと一緒にいたいだけなのに」


白い雪が目に眩しくてしみてくる。
しみるから涙が浮かんでくるんだよな?


「ごめんな、ヴォルフ」


引き寄せて抱き締めた身体は、すんなりとおれの腕のなかで身を任せてくれた。



「ぼくはずっと一緒にいる」



顔をその首筋に埋めると、ヴォルフはおれの身体を暖かく包み込んでくれた。
それがすごく心地よくて嬉しくて抱き締める腕に力が入ってしまう。


「ユーリと一緒にいる」


「うん。……おれもヴォルフと一緒にいるよ」


だから大丈夫。
何も焦ることなんてないんだ。
怖い夢を見たって隣には君がいるから。



……大丈夫。




そしていつの間にか励ますような雪の結晶がヒラヒラとおれたちに舞い降りていた。





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